ケッチャク-22
「ん。食べたいと思うのはテオだけ。もう他は美味しそうに見えない」
パルも顔を動かして至近距離でテオと視線を合わせた。
「テオしか、食べたくない」
黒曜石の様な黒い目の中心がチカリと赤く光る。
獲物を見つけた獰猛な目に、テオはゾクリと背筋を震わせた。
「……最高の殺し文句だな」
背筋の震えは恐怖でなく、歓喜から来るものだった。
「そう?」
「オレしか喰いたくないって事は、オレが特別だって事だろ?超嬉しい♪」
「食べ物として、でも?」
「意外にも嬉しい」
どんな理由であれ、惚れた相手に特別扱いされるのは嬉しい。
「じゃ、食べて良い?」
「どうぞ召し上がれ」
テオは笑いながら言うと自分からパルにキスをする。
食事でヤるのは好きでは無いが、パルに食べられるのは嫌いじゃない。
何だか矛盾した気持ちだが、パルに食べられてパルの一部になれるなら喜んでそうする。
体重をかけて貪る勢いでキスを返すパルに圧され、テオは背中からベットに倒れた。
「ん んぅ」
口の中の唾液が吸い上げられ、パルに吸収されるようなキス。
息継ぎで少し唇が離れている時も、パルの長い舌はテオから離れなかった。
口内を蠢くパルの舌は、カサカサに乾燥しておりテオは思わず眉をしかめる。
「はっ はぁ はぁ」
やっと唇が離れた時には、喉がカラカラになり唇も乾燥していた。
「んふ♪やっぱり美味しい♪」
『精』だけじゃなく、唾液までもが蜜の様に甘い。
「はぁはぁ そりゃ……どうも」
ペロリと自分の唇を舐めたパルの舌が、少し潤いを取り戻しているのを見てテオは安堵と共に苦笑する。
「それじゃぁ、いっただっきまぁす♪」
はむっと首に噛みついたパルは、軽く歯を立てた後そこをなぞる様に舌を這わした。
「ふ ぅ」
ゾワっと鳥肌が立ち口から息が漏れる。
パルの手はテオの服に潜り込み、身体中を撫でまわした。
いつの間にか尻尾が出現して、それまでもがテオの太ももを撫でている。
「は く」
一方的に責められるのに飽きたテオは、腕を上げてパルを抱こうとしたのだが、しなやかな尻尾がそれをピシャリと叩いた。