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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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ケッチャク-10


 テオ達がコソコソ話している間に、ランスと警備隊長の話し合いは終わっていた。
 吸血蔦の最初の目的は多分、水。
 オリジナルの吸血蔦も肉食植物ザルスも水の多い地域を好む。
 まずは水分補給が先決の筈だ。
 その後は、出来るだけ高い場所に移動するだろう。
 何故なら、季節風を使って種子を飛ばすなら風の良く通る高い場所が高率が良いから。
 それを考えると、泉で水分補給した後に領主の舘の反対側にある小高い砂丘へ移動するであろう。
 というのがランスの予想。

「領主様の舘が避難場所になってます……変えた方が……」

「いえ、今からだと逆にパニックになる畏れが……ならば、皆さんで協力してバリケードを築いて貰った方が良いかと。人間、何も知らず何も出来ない方が不安になるものでして、何かしていた方が統率も取りやすいと言うものですよ?」

 ランスの言葉に警備隊長は目をパチパチさせた。
 ただの植物学者の筈のこの優男の方が、長年エザル警備を仕事としている自分より場馴れしている気がする。
 警備隊長の視線に気づいたノアが、さりげなくランスの服を引っ張った。
 ランスはハッとして付け加えるように言葉を続ける。

「……という本を読んだ事があります。かの有名な魔物軍団ファン襲撃事件をまとめた本でして……ご存知ですか?」

「え?いや……」

「いやいや、読んでいて良かった。こんな時に役に立つなんて……ねえ?」

 ランスは王子として様々な教育を受けている。
 帝王学もそのひとつ……状況に応じてどのように指示を出し、民を守るか。
 ファンは少し変わっていて、民にも協力して貰うのも前提だ。
 そうして国と民がひとつになり、強力な絆が出来る。
 うっかり王子様なランスが出てきてしまい、ノアに注意されなければそのまま指揮を取る所だった。

「成る程、ファンの襲撃事件の……確かにその通りですな。分かりました。警備隊は半分バリケード作りに当てましょう。残りは吸血蔦の誘導に」

「はい。そしてエザルから出て、砂丘に登る前の見張らしの良い地点で……」

「除草剤を一気に注入ですな」

 警備隊長の言葉にランスは力強く頷く。
 その後ろでノアは深々と安堵の溜め息をつくのだった。



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