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prohibition―始まりの雨―
【青春 恋愛小説】

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prohibition―始まりの雨―-2

私は男が職員室に入っていった後もしばらく目が離せないまま呆然とたたずんでいた。
そぉ私の心はこの瞬間にはもぉあの男に囚われていたのかもしれない…。
『キーンコーンカーンコーン』
SHR(ショート・ホーム・ルーム)を告げる鐘の音と共に担任の先生が教室に入ってきた。
「今日から3年生、最高学年だ。しかも人生最大のイベントである大学受験まで1年をきった。今日から思う存分勉強しろよ!!」
担任の暑苦しい熱弁を聞き流しつつ窓の外を眺めていた私はみんなが体育館へ移動し始めている事に気付いていなかった。

「美羽!!早く行くよ!!」
亜依(あい)の声に周りを見渡すと誰1人として椅子に座っている者はいなかった。
「…どこに??」
驚きつつ聞いてみると、「ちゃんと起きてる??今から体育館で始業式があるって担任言ってたじゃんかぁ!!」
と言われた。
「ごめん、多分寝てた。」
と言いながら亜依と2人でみんなの後を追いかけて体育館へと急いだ。

体育館へ全学年が集合し床へ体育座りをして並んでいると始業式が始まった。長いくせに中身のない校長の話しを聞きながら先ほどの事を思いだしていた。
あの男の人は誰なんだろぉ…。脳裏に焼き付いて離れないあの光景。一生忘れる事が出来ないような気にさせるほどの熱い衝動が込み上げてくる。何がそこまで自分を引きつけるのかなんてわからない。だけど………
そんな事を考えているうちに校長の話しは終わり、新任の先生の紹介へと移った。
司会の先生の合図で壇上へと上った7人の先生方の中にその男がいた。

また私は釘付けになり口を閉じる事も忘れて見つめ続けた。
背は180cmほどでしっかりとした体付き、真っ黒で長めのサラサラの髪に銀縁のメガネ、その奥には漆黒の瞳。自分を戒めるかのように黒を身にまとった男は『麻生 十夜』と紹介された。化学が専門の理科の教師らしい。
紹介が終わり、壇上から降りた後も目が離せなくなり見つめ続けた。

始業式が終わり教室へ向かう人込みのなか亜依と香絵が
「今年はどれも冴えないけど、麻生先生は大当たりだよねぇ!!」
と話していた。
私はその話には入らないで1人でまた考え込んでいた。整理が着かないこの気持ちの意味を…。


教室へ戻り終令と掃除をしてみんなそれぞれ帰って行った。
香絵はプーさんとデート、亜依は彼氏と駅で待ち合わせてデート、その他の子もいろいろ用事があるらしく……。結局最後に教室に取り残された私は帰るのもめんどくさくなり窓から外を眺めていた。少しの期待を胸に秘めながら…。


だけど1時間もするとさすがに飽きてきて帰ろぉと思い窓を閉め鞄を取りに行った。
次の瞬間、私の思考回路は停止してしまった…。
頭の機能を必死に正常に戻そうとしてもどぉにもならない。
なんとかして体中から紡ぎ出した言葉が

「いつから居たの??」

そぉ。教室のドアの側にあの男が、麻生先生が立っていたのだ。

だけど麻生先生はその質問には答えずに、頭の感覚が戻らない私の側に来て右手で私の髪を撫でながらそっと口付けをした……。



これが私の恋の始まり。


この時はまだ夢見心地の世界に浸っていたから、現実の地獄なんて想像も着かなかった。


愛を貫き通す事は、愛を殺す事より難しいなんて……。


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