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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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とある日常【悠久の王・キュリオ】編 アオイの初めてW-1



その頃・・・




合間をみて自室へと戻ってきたキュリオは己の寝室にアオイがいないことを確認すると、そのまま彼女の部屋へと足を向けた。



(・・・いくらなんでももう起きているか)



口元に笑みを浮かべて可愛らしい扉の前までくると片手をあげて数回ノックする。



「アオイ?いるかい?」



しかし返ってくるのは静けさだけで、人の気配さえも感じられない。
扉を押すと鍵は閉まっておらず・・・純白のドレスもそのままになっていた。




(手紙は読んだ形跡がある・・・ないのは・・・贈った薔薇か)




窓の外に目を向けても愛しい娘の姿はどこにも見当たらず、焦りを感じたキュリオは勢いよく身を翻すと大声で城守のカイの名を呼んだ。




「カイ!!」




その声は階段をあがりアオイの部屋に戻ろうとしたカイの耳に届き、大急ぎで階段を駆け上がる。




「・・・っいかがなさいましたか?キュリオ様・・・」




息を荒くしたカイが何事かという様子で目の前に現れた。




「アオイはどうした」




「え?」




先程までそこにいた少女の姿はなく、行先ももちろん聞いていないカイは大きく目を見開いた。




「申し訳ありません!!少し目を離している間に・・・
すぐにアオイ様を探してまいります!!!」




バタバタと階段を走っていくカイ。
今日は客人が多く、邪(よこしま)なことを考えている者が悠久にいるとは思いたくはないがアオイがもし連れ去られたら・・・と考えただけで生きている心地がしない二人だった。式典どころではなくなってしまったキュリオは、側近の大臣らを呼び寄せ内密にアオイを探すよう指示を出す。




(アオイ・・・無事でいてくれ・・・)



祈る様に手を組み合わせ、まだぬくもりの残る彼女の寝間着を抱きしめた・・・。








なんとか来客に混ざり外へ向けて歩みを進めるアオイ。
至る所で女官たちが作業しているため見つからないように移動するのはとても難しい。




そして、女官たちに意識を集中させすぎて勢いよく何かとぶつかってしまった。




「きゃっ」




アオイの小さな体はその衝撃に耐えられず思わず尻もちをついた。



「ご、ごめんなさい・・・」





慌ててその身を起こすと握られていたキュリオの薔薇がなく、あたりを見回す。
すると・・・



「なぁに?この子供・・・」



あからさまにうっとおしがっているような不機嫌な声にアオイは恐る恐る顔をあげた。アオイよりもずっと高い位置に女の顔があり、その瞳はあまりにも冷たく見下すような視線だった。




「ぶつかってごめんなさい・・・」



消え入りそうな声でアオイがもう一度謝り視線を下げると・・・その女性の豪華なドレスと地面の隙間から、無残にもあの薔薇が踏みつぶされているのが見えた。



「そんな・・・」



震える手で女性の足元に手を伸ばすと、アオイの様子に気が付いた他の女性が羽の扇子で口元を覆いながら小声でつぶやく。



「姉女神様・・・花が・・・」



「え?」



思わず後ずさった"姉女神"の足が退けられると、アオイは優しく拾い上げ大きく傷ついた薔薇をその胸元に握りしめた。



「・・・っ・・」



いまにも溺れおちそうになる涙に瞳をうるませ、アオイは悲しみに立ち尽くした。



「キュリオ様の式典に来るなんて・・・どこかの御令嬢ということはないですよね・・・」



気まずそうにアオイから視線をそらし声をひそめている女性たち。



「身なりを見て見なさい!普通の服を着ているじゃない!!
それにそれなりの家柄なら付き人がいるはずでしょ?」



「この薔薇だってどうせ野薔薇か何かよ!!!」



次第に声の大きくなる"姉女神"の言葉がアオイの心に重く響いた。



(ごめんね・・・私のせいで貴方まで悪く言われてしまって・・・)



しかし、それでも収まらない女神たちの罵声にアオイはキッと目に鋭さを含み声を上げた。



「この花の事を悪く言わないでっ!!!」






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