不易流行 ☆-1
世が2000年問題に揺れた年、ひとりの男が“静かな生活”へ入る。
問題はこれから“何”に生きがいを見出すかであった。
もっとも怠惰で自堕落な生活をするつもりは無く、質素倹約に努め規則正しい生活を送る。
本を読む事が幼少期より好きであった為、ここ最近は図書館に通う事が多くなっていた。
読書自体は家でも出来るが、図書館の雰囲気が好きだったのかもしれない。
そして週二日ではあるが8時間ほど働き始める。
どうも他人と接する機会が少ないと、思考に偏りが出るように思われたのだ。
たった3年で自分が、偏屈な人間になってしまったのではないかと恐れた。
2004年、千章流行34歳
この年千章流行に変化が訪れる。
集合商業施設にて、※石崎佑香に良く似た少女を偶然見かける。
見かけた少女の年頃も、ほぼ同じ位であった。
ネームプレートには、「磯崎恵利子」とある。
この時異常なまでの性的衝動が、激しい頭痛と共に千章流行の身体を駆け巡る。
封印してきた記憶の一部が断片的に甦る。
（石崎佑香に、そして加奈が…… 用務員の…… ）
異常な興奮を覚えた事を想い出す。
しかし今はその時では無く、後に備え能力を抑えるべきである。
（何の為に、どうして？）
少年時に受けた衝撃から、“何か”を思い出せないはがゆさ。
一時間後気がついた千章は、自宅マンションに居た。
それからの千章には、表面的には何の変化も無かった。
週に二日だけ働き残りの五日は図書館で本を読み、スイミングクラブで少しだけのんびり泳ぐ日々。
しかし一点だけ異常なまでの変化が表れていた。
特定の容姿、雰囲気を持った少女に対する、異常なまでの性的興奮と欲求。
この時、同級生石崎佑香との“秘密の取引”を思い出していた。
そしてもうひとりの同級生、太田加奈の身に起きた事も断片的に思い出しつつあった。
異常な興奮の記憶と想いに気付かされる。
レイプ…… 無理矢理する性交、男だったら一度は想いを馳せる。
しかしその代償は大きい。
親告罪とは言え訴えられれば、当然の事ながら社会的な地位を失う。
詳しい事は解らないが、一時の快楽と引き換えるには犠牲は余りにも大きい。
もっとも今の自分に、社会的地位などなく“無”に等しい存在。
しかしもしも実行するなら、それだけの危険を犯すなら……
自分好みの女を「理想の女」を思う存分レイプしてみたい。
思考していくうちに、自分の歪んだ性癖をあらためて知るに至る。
（街中で見かける制服の少女たち、あんな少女を一度でいいから抱いてみたい）
そんな性癖に、千章は薄々気が付いていた。
しかし少女なら誰でもと言う訳では無く、既に男のモノを咥え込み悦びを知った援交少女に興味は無い。
それとは対極に位置するような少女、その容姿はもちろんだが内面に秘める魅力が重要である。
清楚で清潔な香り漂わせる少女、そんな少女の為なら大きな犠牲や危険はいとわないと思える。
例えるなら、 同級生だった石崎佑香のような少女。
絶滅危惧種並み、いやそれ以上に希少となった少女をレイプしてみたい。
せめて外見だけでもそれに近い少女を犯してみたい。
同じ犯罪者の中でも、忌み嫌われ最低の存在とされる性犯罪者。
アメリカの刑務所では、性犯罪者は囚人たちからリンチの対象になるそうだ。
それでも後悔は無いと自身に誓う。
そして、迷惑をかける肉親も今は居ない。
二十年近く経って、ようやく自分の“犯りたい”事を想いだす。
自らの異常な性癖、そして欲望を想い起したのである。
異常な事は認識出来るが望めば出来るはず、自らの欲望に従い全力を尽くす時が来たとさえ思える。
今の自分には都合良くその時間は十分にあり、一日の時間の流れが変わる時。
日常生活の中でも、自然と“目”が欲しいものを追う。
勤務先、図書館、スイミングクラブ、移動時間の車内からも欲してしまう。
そうして“理想の少女”、福井美涼（ふくいみすず）にめぐり合う。
その美しく涼やかな魅力に、もう後戻りする事は出来なくなる。
強姦魔、千章流行が誕生しようとしていた。
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※）石崎佑香は千章が、少年時代に想いを寄せた少女である。
詳しくは、「同級生 石崎佑香」をご参照下さい。
http://syosetu.net/pc/book.php?pid=book&book_no=6174