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LADY GUN
【推理 推理小説】

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抑えきれない想い-3

 若菜の目の前では道路工事が行われていた。地震の影響で道はだいぶ補修を強いられている。割と交通量の多い道路は夜間に行われている。10人ぐらいの作業員が作業していた。親方であろうか、元気な声で指示を出している。
 若菜はその工事現場にゆっくりと歩み寄る。目の前にヘルメットを目深に被り黙々と地面を掘り返している男性の横に立ち作業を見つめていた。その男性は何か考え事をしながら作業しているのだろうか。若菜の存在に気付かない。
 「んっ?」
その作業員が気配を感じたのは、とても道路工事にはそぐわないような甘くいい匂いに気付いたからだ。ハッとした様子で若菜の方に顔を向けた。
 「あっ…」
作業員は若菜の顔を見て驚いたような表情を浮かべて手を止めた。
 「わ、若菜ちゃん…」
作業員は若菜を知っている様子だった。当然若菜は彼が誰なのかを知っていてここに来ている。若菜はニコッと笑い、そして言った。
 「ご無沙汰してます、俊介さん。」
そう、若菜の目の前にいるのは静香の恋人であった角田俊介だった。俊介はあの事件のショックと静香を失った悲しみからとても刑事を続ける気にはなれず退職してしまった。以後、工事現場の仕事をしていた。
 「ど、どうしてここに…?」
 「たまたま通りかかっただけです。」
若菜の様子を見ればそれが嘘なのかはすぐに分かった。すると親方から激しい声が飛ぶ。
 「コラァ角田!!お前トロいんだから女なんかと喋ってる暇なんかねーだろうがっ!!働け!!」
 「は、はい!すみません!!」
俊介は慌てて作業に戻る。
 「終わるまで待ってますね。」
 「いや、終わるの深夜の1時だぞ?」
 「はい。待ってる。」
若菜は少し離れた歩道のガードレールに腰掛けた。
 (どうして若菜ちゃんが…?)
気になりチラチラ若菜を見る。するといつ見ても若菜は微笑みを浮かべて俊介を見つめていた。目が合うととっさに視線を逸らしひたすら作業を続ける俊介。そんな俊介を若菜はじっと見つめていた。


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