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疼くの……
【熟女/人妻 官能小説】

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深遠な疼き-1

 その電話がかかってきたのは翌年の春のことである。相手が丁重に名乗った時、私はそれが誰なのかすぐにわかった。

「突然のお電話で失礼いたします」
男性の声に聞き覚えがあり、さらに、『目黒の早瀬』と聞いて古いお屋敷が浮かび、貸し切り風呂の秘事が思い出された。
(あの男性……ご主人……)
記憶が鮮明になったと同時に胸騒ぎがした。

「水口さんとおっしゃるんですか」
「はい……」
「早瀬さんじゃありませんよね」
「は?」
「いや、失礼」
男性は言葉を切り、
「あの、決していたずら電話ではありませんので……。実は……」

 男性は電話をかけた経緯を話し始めた。私が誰なのか気づいていないようだった。
「妻の手帳にお宅様の番号が書いてありまして、そこに早瀬美弥子と名前があったものですから」
「早瀬美弥子……」
「これ、妻の名前なんです。もしかして同姓同名の方がいらしてお付き合いでもあるのかと、気になっておかけしてみたんです。見当違いのようでした。すみません」
「水口です……」
「そうですか。……妻とはお知り合いということでしょうか?」
私は何と答えていいものやら戸惑って、
「そう、ですね。親しくというほどでもなくて……」
言葉を濁し、
「奥さまはお元気ですか?」
心に兆した疑念を訊ねた。

「妻は亡くなりました。先週納骨が済みまして、遺品を整理していたところ手帳を見つけたのです」
 予感があっても重いものが響いた。奥さんの笑顔が頭に広がった。
「あんなにお元気でしたのに」
「妻とはいつ頃?」
「もう、だいぶ前ですが……」
性の話を世間話みたいに語る大らかな彼女の穏やかな顔が浮かんで胸が詰まった。家を訪問したとはいえ、旅館を含めてわずか二度しか会っていないのになぜか長年の知己のような存在を感じていた。
(開放的な方だったからだわ……)
もう一度会いたい想いがあの時あった。とても楽しいひと時で、惹きつけられるものを感じていた。

「お伺いしたいのですが……」
ぜひご位牌に手を合わせたい。ご主人は喜んでくれた。

 日時を約束して電話を切り、ぼんやりしているうちに落ち着かなくなった。考えてみればあのご主人は、私のアソコもお尻の穴も舐め回した人なのだ。その時の女とは知らないだろうが、会えば思い出すにちがいない。
(どうする?……)
それに、奥さんは想いの片隅に私に対して嫉妬を感じていた節もある。
(どうしよう……)
迷いながら、一方で限りなく優しく愛撫してくれたご主人の感触が疼きに繋がっていった。


 ホテルの一件以来、健吾は別人のように大人しくなった。表情を変えずに理屈を口にすることもなくなり、話しかければ応じるものの、勉強以外のことでは自分から口を開くことはなくなった。
(ショックだったのだろうか……)
あの日、風呂を出た後、ベッドでぐったりと放心している体にとりつき、二度、抜いた。無理やりという強引なものであった。さすがに最後は痙攣も微動になり、息も絶え絶えの状態であった。

(想像を絶するセックスの実態を知ったからか、女の凄まじさにおののいたのか……)
ともかく、いままでの『セックス観』が脆くも崩れ去ったということだったと思う。所詮、知識だけの土台のないものだ。
(女を甘く見ちゃだめよ)
異常に燃えた昂奮を思い出しながら、勝利した満足感があった。

 だが、大人げなかったという後悔もある。彼のため、と理由をつけながら、行為の激しさは尋常ではなかった。『闘い』として挑んでしまった。あんな体験をして健吾は……。 でも、彼にはあれくらいしないと効果がなかったんだとも思う。『おしおき』は早いうちにしなければならない。……

 頭のいい健吾のことだ。結果を受け止め、分析して自分を知ったと思う。その証拠に、股間は元気に跳ね上がり、私が触ると素直に喜ぶようになった。
「出してあげようか?」
言うと、
「はい。お願いします」
嬉しそうに答える。口で高め、フィニッシュは手で扱く。体は合わせなかった。ホテルで見せつけた女の実体をそのまま彼の脳裏に残しておきたかったし、私自身、体力、気力の限界を超えたセックスだったので、健吾を受け入れる気持ちにならなかったのである。そして彼との間に出来あがった目に見えない『大人の防護壁』はそのままにすべきだと思っていた。
(大人のたしなみってものだわ……)

「今日はがまんね」
二回に一回くらいはそう言う。ジャージの上からではあるが、揉んで擦って、顔色を見る。ちょっと意地悪いとは思うが、
「はい」
健吾は私の一言に従って、気持ちを入れ替えるように大きく息をついて机に向かう。セックスは自分の考えが及ばない世界なのだと悟ったものと思う。
 


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