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水族館
【家族 その他小説】

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水族館-6


「あっ、見て! イルカショーやるって!」
「いでっ?! ちょ、ちょっと里保、いきなり走るなって!」
「しょうがないじゃん、急がないと始まっちゃうんだから!」

 なんだかこのままいい雰囲気でまったり回れそうだなと思っていたが甘かった。掲示してあったイルカショーのお知らせを見付けた里保がいきなり走りだし、腕を掴まれていた俺は引っ張られて転びそうになった。あーあ、もうちょっとだけこの雰囲気味わいたかったなぁ。


「わぁー、すっごーい! イルカってあんなに高く飛べるんだぁー!」
「いま笑ってたよな? 絶対笑ってたよな、イルカ! 可愛い!」


 そして、僅か数分後くらいには俺も里保と一緒にはしゃいでいた。我ながら物事を深く考えないというか、単純な性質(タチ)だよな。まあいいんだ、せっかく外に出てるんだから楽しい方がいい。
 気が付いたら、帰りの電車の中だった。楽しい時間はあっという間に過ぎていくというけど、正しい。この気持ちのいい余韻は昼過ぎまで寝こけていたら絶対に味わえなかっただろうな。


「……里保……」
「すぅ……すぅ……」


 さすがに疲れただろうな。今日はイルカショー以外はひたすら立ちっぱなしだったし、ずっと喋ってたから疲れるのも無理はない。眠りながらも、俺の手を握るのは忘れていない。お土産に買ったイルカの指輪をはめているのも、同じく。
 俺の肩に頭を寄せてすやすや眠る里保の肩を抱いて、寝顔を見つめた。無防備過ぎるな、まったく。いまなら、出来そうだ。さっきやらなかったイタズラを。


『ぷにゅっ』


 指に伝わる里保の柔らかいほっぺの感触。今朝はずっとイタズラされっぱなしだったんだ。だから、いいだろ? せめて、お前が寝ている時くらいは。

「んふふふ……お兄ちゃん……すぅ……」

 気がつけば、寝言を言っている里保の表情と、俺の表情がリンクしていた。


〜おしまい〜


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