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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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千年メダル-8

しばらく合掌していると、前方から久留米さんの声が小さく聞こえてきた。


「やっとお前らに顔合わす勇気が出てきたよ」


あたしはゆっくり彼の隣に足を運ぶ。


そして久留米さんを肩越しに見上げると、彼は遥か遠くの水平線を目を細めながら見つめていた。


「お前らが死んで、自分の意思でここに来れるようになるまで、ずいぶん時間がかかっちまったな。

まあ、現場検証とか色々あって足は何度か運んでいたんだけどな」


「…………」


そこまで言うと、久留米さんはあたしの視線に気付いたのか、ゆっくりこちらに顔を向けた。


その表情は、思いの外穏やかだった。



「芽衣子が死んでから、せめて線香でもあげさせて欲しくて彼女の実家に何度か行ったんだけど、完全に門前払いでさ。

まあ、当然だよな。大事な一人娘が俺のせいで死んでしまったんだから」


「……でも、それは……」


死を選んだのは芽衣子さんの意志なんだから、久留米さんが責められる道理はないと思うんだけど、こないだのあたしを怒鳴りつけた彼を思い出すと、これ以上何も言えなかった。


「茂の実家でもおんなじでさ。

もう関わらないでくれって追い返されちまった」


無理に笑顔を作って話す久留米さんを見てると、鼻の奥がツンと痛み出す。


抑えようとしても、悲しそうに笑う彼を見てたら、勝手に涙が溢れてきた。


重力に逆らえなかったそれは、あたしの頬を伝い、そこから落ちていく。


……乾いた地面にポツリと、小さなシミができた。




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