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LADY GUN
【推理 推理小説】

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売春区域-9

 騒ぎを起こし警察に連行された多くの人間から薬物使用が確認された。その殆どから田口から直接薬物を売買していた事が判明。無駄だとは思ったが使用された携帯の番号から持ち主を当たっが、登録されていたのは震災で命を亡くした被害者のものであった。初めから期待していなかった若菜は特に落胆はしなかった。
 「何て奴だ!被災地で悪行を働くなんて。しかも薬物を蔓延させ街を崩壊寸前まで追い込むとは!」
憤慨する石山。しかし若菜は冷静だった。
 「田口は金を集めやすく利用できそうな女がたくさんいる場所なら被災地だろうが都心だろうがどけでも狙いますよ。そういう男ですから。」
 「血も涙もないな!」
 「加藤綾美を残したのは警察にわざと発見させる為でしょう。いなぎ市での事件はこれからこれと同じように他の被災地も狙うぞという犯行声明と見てもいいでしょう。自分の意志を示して警察との駆け引きを楽しんでる。田口の本来の復讐は成し遂げられました。今、田口には警察への恨みはないはずです。では何故未だに犯行を繰り返すのか…、それは捕まるか捕まらないかのゲームを楽しんでいるからに違いありません。田口の逃げ切りゲームです。ただ逃げ切るだけではつまらない、派手な事をしてより警察に発見され易い状況を作り、そんな中でも逃げ切るスリルを求めてこれからも派手な行動をしてくるはずです。そして警察の包囲網からすり抜けて、振り返りながらニヤリと笑うはずです。」
石山は若菜の思考能力に驚きながらもすっかり立派になったその姿に尊敬の念すら覚えた。
 「ふざけた野郎だ。ではもうここにはいないか。他の被災地と連携して情報を集めないとな。」
そう言って若菜の顔を見る石山だが、若菜は何か考え事をしてるような表情をしていた。
 「どうした?」
 「あ、いえ…」
 「何だよ?言ってみろよ?」
重そうな口を開く。
 「もしかしたら田口はまだここに居るかも知れません。」
意外な言葉に驚く石山。
 「どうしてだ?」
 「さっき私が言った事を考えるだろうと田口が読んだなら、次なる標的とされる街に目を向けここを離れる私達警察の後ろ姿を見てニヤリと笑うんじゃないかと思って…。田口はいつも私達の先を読み裏をかいてきます。あの倉庫の時のように警察があの倉庫をマークから外すのを予測して結局はあの倉庫が犯行に使われました。もしかしたら同じような事をまた考えているのではないかと…。」
 「そうか…、そうかも知れないな。凄いなお前。大したもんだ!」
 「いえ、確信はありませんので…。」
 「お前は犯罪心理学を必死で学んで来た。それに上原刑事の優秀な遺伝子を持ち、有能な皆川静香のそばで勉強して来た。その結果、最も大切な刑事の勘って奴を身につける事が出来たんだ。自信を持て。俺は支持するよ。」
石山は若菜の背中をポンと叩いた。
 「ありがとうございます。」
頭を下げる若菜。この時に感じた若菜の刑事の勘が以後の捜査の中での判断に大きな役割を果たす事になるのであった。
 「でも何でこのタイミングで加藤綾美さんは解放されたんでしょうか。こう言っては何ですが、まだまだ使い道はあるはず。それに私達警察への取引にも使えるはずなのに、何か、見つけて下さいみたいにあっさり。何か裏がありそうな…」
綾美が発見されたのは朗報だが、若菜にはどうも何か引っ掛かるのであった。


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