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LADY GUN
【推理 推理小説】

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売春区域-3

 「では突入します。」
 「はい!」
若菜を先頭に廃業したホテル内へ入る。すると受付らしき男性が驚いたような顔をしてこちらを見ていた。
 「売春斡旋容疑で家宅捜査令状が出ております。大人しく捜査に協力して下さい。」
 「…」
男は黙り込む。すると隙を見てホテル時代の受付の裏にある部屋に走り出した。
 「待ちなさい!」
捜査員達が後を追う。しかしあっさりと確保した。その部屋の裏口にも捜査員が配備されており殆ど袋小路じょうたいであった為に難なく確保できた。
 「今から家宅捜査を行います。では始めて下さい。」
若菜の掛け声とともに捜査員達が客室に次々と侵入する。慌てる男女の声で騒々しくなる。
 「売春行為を確認しました!」
 「こちらもです!」
次々に摘発される従業員と客。部屋数は60あったが、使用されていたのは20部屋。全て確保した。しかし1部屋だけ頑丈に鍵がかかっておりどうしても開かないという報告があった。最上階のスィートルームだ。若菜は自らスィートルームに向かう。
 「進入します。」
若菜はドアノブに向かい発砲した。合計6発。これが実践で初めて若菜が発砲した瞬間だった。鍵は見事に壊れた。そしてドアを蹴り飛ばす若菜。物凄い音を立ててドアは吹っ飛んだ。銃を構え突入する若菜。
 「うっ…」
突入した瞬間、何とも言えない異臭を感じた。部屋の中に煙っぽいものが立ち込めていた。火事ではないが煙草の煙が蔓延しているような感じだ。鼻を覆い中へと進む。
 するとベッドの上にしゃがみ込んでいる人影が見えた。何やらブツブツと言葉を発している。不気味に感じた若菜だがゆっくりと近づく。警戒しながら距離を詰める若菜。
 「…ちょうだい…。早く…」
異様な雰囲気だ。どうやら女性らしい。すっかり痩せこけている。何かに取り付かれているようで気味が悪い。その呟きに耳を傾け言葉を拾う。
 「…ちょうだい…コ…ちょうだい…」
 「えっ…?」
その言葉に耳を疑った。若菜に緊張が走る。もう一度、その言葉を確認する。
 「コカ…ちょうだい…。コカイン、ちょうだい…」
コカインちょうだい…、そう聞き取れた。若菜はその女性を目を凝らして見た。
 「!?」
若菜は驚いた。まさかこんな所で彼女に遭うとは思わなかったからだ。同時に廃ホテルの周りの警備を指揮する石山に無線で伝える。
 「建物から鼠一匹も逃がさぬよう厳重に監視して下さい!」
若菜のただ事ならぬ口調を察し石山はすかさず指示を出し緊急配備を敷いた。
 若菜はその女性に歩み寄る。
 「加藤…綾美さんですね…?」
そう、すっかり病的な姿になり果てているが、それは田口徹に連れ去られ行方が分からなくなっていた加藤綾美だった。
 「早くちょうだい…早く…」
目が虚ろだ。そう言って若菜の手にしがみついきた。
 「(かなりヤバいわね…)救急車を手配して下さい!」
かなり薬物中毒に犯されているようだった。刑事が救急車を手配する。
 「もう大丈夫ですからね?安心して下さい。」
 「早く…ちょうだい…早く…」
意識もまともにはないようだ。まるで幽霊のような風貌の綾美を若菜は抱き締める。
 「もう大丈夫。あなたは助かったんです。だから安心して下さい。」
しかし綾美はずっと同じ言葉を呟き続けていた。
 やがて救急車が到着、病院に搬送された綾美。若菜は警視庁本部に連絡を入れた。
 「やっぱり田口徹はここにいたんだ!!」
若菜は石山の下へ向かった。
 「今搬送されたのは…?」
 「加藤綾美さんです。」
 「えっ!?本当か!?間違いなく加藤綾美なのか!?」
驚く石山。
 「間違いないです。それより怪しい人影は…?」
 「なかったよ。鼠一匹見逃してない。」
 「そうですか…。応援を呼んでここを徹底的に捜査してもいいでしょうか?」
 「ああ。」
若菜は応援を呼び廃ホテル内を虱潰しに調べた。しかし田口徹本人は勿論、田口に繋がるようなものは発見出来なかった。
 「そんなへまはしないか、奴は…」
想定の範囲内だ。しかしここで加藤綾美を発見出来たのは大きい。ようやく田口徹の尻尾を掴めたような気がしたからだ。今まで持てなかったた田口徹捜査への自信がようやく形になったような気がした若菜だった。


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