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君を救いたい
【純愛 恋愛小説】

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二人の罪-12

しゅう視点

先ほどから耳にする、医師を呼ぶアナウンスや周囲の声が、まともに聞こえず
激しい耳鳴りが俺を苦しめる。視界も何だか傾きぼやけて見える。

「大変だっ!お前のお母さんが、買い物中、階段から足を滑らせ意識不明の重体だって」

あまりに突然の出来事で、一瞬先生が何を言ってるのか理解に苦しんだ。
でも先生のあの慌てた表情、とても冗談を、言っている様にも思えずその話がホントで
あると確信し、それまで正常だった胸が、急に高まって行き…俺は無我夢中でこれから
練習である事など考えもせず、飛び出し辛うじて聞いた病院へ地面を必死に蹴り。

すぐさま受付で、看護師から母さんの居る病室を訪ねようと思ったのだが、この日は
運悪く急患が沢山入ったようで、「今調べますので少々お待ちください」と言われ
納得いかないまま、ロビーの椅子に腰を下ろす。

「母さん、母さん…!」

手の震えが止まらない、座ってるのにその感触が無い…

俺はこの悪夢から逃れようと、一度外へ出て、ケータイを取り出し父さんと姉さんに
電話をしよう試みる。

プルルルルルル

「助けて…」

プルルルルルル

「一人にしないでっ!」

「お掛けになった電話番号は、現在電源が切れているか…」

姉さんは最近、隣町の病院での勤めで普段から帰りが遅いし、父さんもこの頃残業が多く
俺は、誰にすがる事も出来ず…

弱い足取りで戻るも、光景は変わらず母さんの姿も無く、先ほどから忙しくてピリピリ
した医師や看護師に、瀕死の状態で担架に運ばれていく人と、その人を心配し悲鳴を挙げ
泣き出す家族らの姿が、嫌でも目に映り。

何でこんな事に、昨日まであんなに元気だったのに…。俺は昨日の母さんとのやり取りを
思い出す。

「はぁはぁ…」

誰かが息を切らしやって来た、だがその姿は今の俺の目にしたい人物でもなく。

怖い…嫌だ。

走馬灯の様に思い返される、孤独と理不尽の日々。この頃の俺は今の普通の生活に慣れ
今、改めてあの日の頃がいかに残酷で絶望的だったか…

冷静に考えれば、父さんは蒸発してないし、姉さんも夜遅いとは言え、ちゃんと帰ってきてるし、大袈裟なのだろう、でも…でも、俺は、俺は。

心臓の暴走が止まらない、脈も速いテンポで動き

嘘だ、嘘だ嘘だ…こんなのは嘘だ、こんなのはただの夢だ、だから早く覚めてくれっ!

永遠とも思える時間が流れいく、俺は一人…誰も助けてくれない

嫌だ、嫌だ…誰か、助けて…


ギュ

「!」

母さんの感触、では無いものの何処か柔らかく、そして暖かい感触が片手の上に感じ
泣き出しそうな顔を、ゆっくりその手の方に向けるとソコに…

険しい表情で、俺の手を握りつつも前を向く俺の良く知った茶髪の少女の姿があった

「…樹里奈?」

そう小声で言うも聞こえて居ないのか、返事は無く、代わりにこんな言葉を掛ける

「大丈夫ダヨ…」

そう言うと、握るその手に更に力が入り

何だか、序所に孤独感が薄れ、心臓の動きも収まっていき

「俺は…俺は。」

「貴方は一人じゃない!だから、しっかり…」

今の俺と樹里奈の関係から、遠慮をしある程度距離を取りつつも、俺の事を救おうとしてくれてる…。

思い出す、絶望の日々と同時にその窮地から救おうと、働き掛ける俺の大切な人との温もりを…。

「お待たせ致しました、佐藤サン」

ようやく俺が訪ねた看護師から、母さんの居る病室番号を教えてくれて
俺より先に立ち上がった彼女が弱ってる俺を、引率するように、言葉は何も掛けずとも
目が「行きましょう」と言っている様で。俺は勿論向かうことに。

向かう最中、彼女はただ一度として、震える俺の手を放す事は無かった…




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