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LADY GUN
【推理 推理小説】

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病んだ精神-7

 深夜のいなぎ東警察署に到着し先程の強盗強姦未遂の容疑者3人の取調に同席する石山と若菜。川原康志、佐藤豊、沼田真也という3人の容疑者だ。全員が愛地県から原発の復旧工事の為にこちらに働きに来ていた。3人とも強盗強姦の犯行に及んだ理由は同じだった。取調べを受ける沼田真也の様子を若菜は見ていた。沼田は苛立ちを隠せない様子で言葉を発していた。
 「原発事故の補償金でここらの人間はみんな腐ってる。金に物を言わせて天狗になり横暴な振る舞いばかりしやがる。ある日俺らが飲んでいた時、寄ったガキが俺らに絡んで来て、ナメた事を言いやがった。安い給料でご苦労さん、早く俺らの為に原発直してくれよな、ってね。そん時は腸が煮えくり返ったよ。こっちは危険な場所で安い金で倒れるぐらいに働いてんのによ、あいつらは働かなくても大金が毎月降ってくるんだ。身の丈に会わない高級車を乗り回し何でも金で解決しようとしやがる。俺だって初めは震災で多くの物を失い苦しんでいる被災地の人達を早く元通りの生活に戻してやらなきゃと思い必死で頑張ったよ。しかし補償金が出てからは奴らの変わりように腹が立つようになった。こいつら困ってねーじゃん!みたいな。どうしてこんな奴らの為に危険を冒してまで必死に働かなきゃならないんだってね。初めに襲ったのは飲み屋で絡んで来たガキさ。車で尾行して連れていた女を輪姦して金を奪ってやったよ。そしたらスッキリしてな。ふざけた現地人を次々に襲うと気分が晴れた。強姦した女の写真を撮って脅して性玩具にしてさ。気分良かったよ。それをネタに男から金をゆすってな。ザマァ見ろさ。そんなの俺らだけじゃない。たくさんの出稼ぎ労働者がやってるよ。罰だ、罰。原発成金のクソ野郎どもに罰を与えただけさ。」
 「…」
敢えて諭さなかった。昨日のファミレスの件といい、若菜自身も被災地の現状が自分が思っていたものとは異なる事を感じていたからだ。震災が人間を変えてしまった…、ファミレスの店員が呟いた言葉が若菜の頭に響き渡る。
 3人の取調べが終わり石山と合流した。
 「まぁ、犯罪は犯罪で如何なる理由があろうとも許されるべきではないものだが、人道的には奴らが言う事を無視する訳にはいかないよな。複雑だな。」
 「私もそう思います。私は原発のある地域で不安を抱えながら生活してきた事、そしてその不安が現実になってしまった事を考えれば付近住民が補償金を貰うのは当然だと思ってます。でも実際現地では大金を手にした人間がお金によって変わってしまっているという事実。勿論全ての人がそうではないんでしょうが、その事については容疑者の言っている事も分からないでもない。あの震災は色んな意味でたくさんの物を奪ってしまったんですね。」
感じる物は同じだったようだ。
 「そう言う人間の欲望が渦巻く場所を田口が見逃す訳がない。俺は被災地に田口の影を感じるよ。」
若菜がニコッと笑う。
 「石山さんも田口の事がだいぶ分かるようになりましたね。」
 「まぁな。俺だって皆川を奪った田口を許せない1人だからな。お前1人じゃないんだ。みんなで立ち向かうんだからな?」
 「はい。」
いい笑顔を見せた若菜。そんな若菜を見つめる石山は島田から1人で暴走しかけない若菜を抑止する役割を与えられている。勿論そんな指令が出ていなくても石山は若菜のパートナーに志願していただろう。若菜もそれを知りながら石山を信頼し迷惑をかけないように努力しているのであった。


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