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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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メイ-22

「……宗川さん」


前屈姿勢のまま、沈黙を破った彼の静かな声。


抑揚のない声にビクッと身体が震える。


「は、はい?」


ヤバい、彼の気に障るようなことをこの子はしてしまったのかも。


責めるような視線をメイに向けるも、すでに眠りの世界に入りかけているところだった。


ダッシュボードの傷の修復っていくらくらいするんだろう……。


小さい頃に習った算盤が頭の中に浮かんで、雀の涙ほどのあたしの給料の内訳を勝手に計算し始めた。


でも、




「明日、なんか予定入ってる?」




彼の口から出たのは、思いもよらない言葉だった。


「い、いえ……、特に何も……」


いきなり話を脱線させた久留米さんに、面食らいながらあたしがそう言うと、彼は真面目な顔をこちらに向け、


「じゃあ、ちょっとだけ付き合って欲しいとこがあるんだけどさ、ついて来てくれる?」


と訊ねてきた。


不意に跳ねる心臓。





やけに神妙な顔に、少し戸惑いながらも頷く。


すると、彼は少し安堵した表情になり、


「じゃあ、明日午前中にでも迎えに行くから」


とだけ言って、前を向く。




久留米さんはそれっきり何も言わないまま車を走らせた。


“明日どこに行くんですか?”


彼の様子を見てると、なぜかこんな簡単な疑問すら口に出せず、相変わらず眠ったままのメイをぼんやり見つめることしかできなかった。





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