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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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メイ-10

静寂を破る、アイドリングしたエンジン音とドアが開く音。


なんとなく、身を強ばらせたあたしは胸の辺りの服をギュッと握りしめた。


なんだろ、道路の真ん中で座っていたから怒られるのかな……。


いや、怒られるならまだマシだ。


もしこれが変な人で、車の中に引きずり込まれでもしたら……。


朦朧とする意識の中でも、身体が一旦危険を察知してしまえば、途端に身体がすくみ始める。


次第にこちらに近付いてくる足音。


震え出した身体に俯いたままのあたしの顔。


この状態で、相手の様子を伺うなんて、怖くてとてもできやしない。


だって、わざわざ車を停めてこちらに向かってくるなんて、明らかにあたしに何か目的があるわけで。


通り魔、レイプ、強盗、殺人……。


あたしの頭の中にはそういうイヤな言葉ばかりが離れて消えなくなる。


とにかく、逃げるか隠れるかしないと……!


相手の足音に合わせてカチカチ鳴り出す奥歯。


逃げ出さなければいけないとわかってるのに、恐怖で身体が全く動かない。


怖い! 怖い!! 怖い!!!


迫る静かな足音に、どうしていいのかわからず目をギュッと閉じる。


服を掴んだ手が尋常じゃないくらい汗ばんでいるのに、背中は血の気が引いたように寒気に襲われていた。


せめて大声を出さないと……。


案の定足音が目の前で止まった途端、あたしは震える唇を開いて、なんとか声を振り絞った。






だけど。






「誰か……!」


「宗川さん?」


あたしが叫ぶのとほぼ同時に発せられた足音の主の声に、“助けて”という喉から出掛かった言葉は再び嚥下されたのだった。






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