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雨の歌
【女性向け 官能小説】

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穏やかな出会い-3



 良平は街外れのホームセンターに勤めていた。大学を出てすぐ就職し、7年目を迎えた現在は販売部長を務めている。

 その日、良平は店内を巡回しているとき、ペットコーナーで、客を相手ににこやかに小犬の説明をしているリサの姿を認めた。彼女は客の話に耳を傾けながら、犬の種類とその性質、飼い方などを笑顔を絶やすことなく、丁寧に解説していた。

 良平がその傍らを通り過ぎるとき、リサは小さく会釈をして、良平に目を向けた。
 良平も小さくうなずくと、その場を離れた。


 夜、閉店間近に再び巡回をしていた良平は、リサが子猫のケージの前にじっと佇んでいるのを見つけ、声を掛けた。
「春日野さん」
 リサは少しびっくりしたように肩を揺らして、良平に振り向き、慌てたように目元を拭った。
「あ、天道部長」
 良平はリサに近づいた。「どうしたの?」
 リサはばつが悪そうにうつむいた。
「何か、仕事で辛いことでもあった?」良平は心配そうに訊いた。
「い、いえ。大丈夫です」
「悩みがあるのなら、聞いてあげてもいいですけど……」

「はい……」リサは顔を上げて良平を見た。

 リサの視線に瞳を射抜かれ、良平は唾を飲み込んだ。

「私、最近、つき合ってた人と別れたんです」
 良平は少し動揺して目をしばたたかせた。
 小さなため息をついて、リサは言った。「それだけです」そして彼女はにっこりと笑った。

「辛かったですね……」良平は自分がまるでそんな目にあったかのように悲しい顔をした。

「すみません、部長。こんなプライベートなことで、仕事を疎かにしちゃうなんて……」
「いや、貴女はちゃんと仕事をこなしてますよ。普通以上に」
「ありがとうございます」リサはまた穏やかに笑った。失恋の苦しさを抱えているにもかかわらず、その笑顔は人に癒しを与えてくれるような温かさだと良平は思った。

「元気出して」良平もにっこりと笑った。


 勤務が終わり、事務所を出た良平は、ケータイを取り出して耳に当てた。
「今、仕事が終わったんだ。これからすぐ行くよ」
 それだけ言って、彼は通話を切り、小走りで従業員用駐車場に向かった。


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