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LADY GUN
【推理 推理小説】

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静香の命-7

 マスコミがたくさん押し寄せ、ニュースでその模様は大々的に報じられた。マスコミ各社は若菜の姿を探すが見つけられない。箝口令が布かれている警察関係者はグッと口を紐で結んだ。
 「…んんん」
静香の葬儀が行われた夜日本22時頃、ようやく若菜が目を覚ます。
 「あれ…私…。お葬式!先輩のお葬式!」
飛び起きる若菜を制止する麗子。
 「お葬式は終わったわ。」
 「終わったって…、どうして起こしてくれなかったの!!」
語気を荒くする若菜を一喝する。
 「いつまでも甘えてるんじゃありません!あなたはお葬式に出るのが怖かっただけでしょう!」
 「…」
 「ああすれば気が狂ったと思われてお葬式から逃げられると思ったの!?だとしたらあなたは救いようがない馬鹿だわ?あなたは静香ちゃんの気持ちを踏みにじった!私は許さないわよ!頭を冷やしなさい!!」
麗子は怒鳴りつけて病室を出て行った。ベッドにへたりこみ俯き涙を流す若菜。
 「ごめん、お母さん…。ごめん、先輩…。私、どうしていいか分かんないよ…。」
逃げた自分を見抜いていた麗子の言葉が胸に深く突き刺さった。若菜にとって参列者全員の目が怖くて仕方なかったのだ。静香ではなく自分が死ねば良かったのに…、皆がそう思っているようで怖かった。悩みに悩んで苦しむ若菜。ずっとベッドに縮こまり小さくなったまま朝を迎えた。
 翌朝、麗子が迎えに来た。若菜は麗子が運転する車の助手席に座り外を向きながら無言でいた。すると見慣れた風景が目に飛び込んできた。
 「あれ?どうしてお父さんのお墓に…?」
車は正芳の眠る墓地の駐車場に停まった。何も言わず車を降りて歩き出した麗子の後を少し離れて歩く若菜。正芳の墓前に着いた。
 「静香ちゃんの遺骨はここに納められているのよ。」
麗子の言葉に驚く若菜。
 「ど、どうして…?」
何の血縁もない静香が自分の家の墓に入っている事に驚いた。
 「静香ちゃんはね、小さい頃親に捨てられて施設で育った孤児なの。」
 「えっ…?」
衝撃の事実だった。確かに静香の口から家族の話を聞いた事はなかったが、まさかそんな事情があったなどとは思いもしなかった。
 静香ちゃんが施設に預けられた数年後、ご両親が犯罪を起こし服役している事が分かったの。ご両親は静香ちゃんの親である事を放棄したわ。でも静香ちゃんはご両親の下へ帰る事を拒んだし、ご両親も静香ちゃんにはもう関わるつもりはなかったの。戸籍はそのままだったけど、事実上離縁状態だったのよ。静香ちゃんは頑張って警察に入ったけど、でも親が犯罪者だった事はずっと懸念されてた。だからお父さんは静香ちゃんを養子として迎え入れる準備をしていた所だったの。名前だけの親ならこれから将来、静香ちゃんにとって負担でしかないし不都合な事だって多いだろうと。たとえ形式上でもしっかり力になれる親がいた方がいいと考えて養子にするつもりだったのよ。静香ちゃんには言ってなかったけど。でもいつか結婚する時に親のいない嫁にするなんて可哀想だって、その時が来たらそうするつもりだったのよ。今回本当のご両親には連絡がつかなかっの。静香ちゃんを適当な場所に葬るなんてできない。だから私がお願いしてうちのお墓に入ってもらったの。」
 「…」
自分の知らない所でそのような話になっていたなんて思いもしなかった。しかし若菜は理解し納得できた。陰りのない気持ちで静香を迎え入れる事ができた。
 「若菜、声に出さなくていいから、しっかりと静香ちゃんにお別れの言葉を伝えなさい。」
麗子がそう促すとゆっくりと頷いた若菜は目を閉じ手を合わせ心の中で静香に思いつく言葉を伝え始めた。1時間はそのままの状態でいただろうか。その間、麗子は一緒に手を合わせ娘と共に静香を偲んでいたのであった。


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