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LADY GUN
【推理 推理小説】

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静香の命-5

 「物事の良し悪しは時間が経ってから初めて分かる物なのよ。もし静香ちゃんがあのまま立ち直れなくて刑事を辞めてたとしたら、お母さんはお父さんの死を今でも悲しんでいたと思う。でもお父さんの意志を見事に継いでくれた静香ちゃんのお陰で私はお父さんの死を刑事の運命だと理解して受け入れられたのよ。日に日に静香ちゃんが立派な刑事になっていく姿をお父さんにお仏壇の前で報告するのが楽しみだったわ。そりゃあ静香ちゃんの死は物凄く悲しい。自分の娘を守り命を落としてしまった事に申し訳無く思う。でも静香ちゃんはそんな謝罪なんて求めてないと思うの。いい?あなたは静香ちゃんが命をかけてまで守ろうとした人間なの。あの偉大な皆川静香刑事にそう思われた人間なのよ?自信を持ちなさい。」
 「…」
 「今は刑事を続ける自信はないでしょう。泣いてもいい。どんどん悲しみなさい。ただあなたを命がけで守った静香の意志を良く考えなさい。お母さんが言えるのはそれだけよ?後は自分自身で考えなさい…、ね?」
麗子はそう言うと若菜の頭を二、三度撫でてから立ち上がり葬儀に戻る。
 控え室に1人。テーブルを暫く見つめていると、若菜は無意識に椅子を立ち上がり葬儀に戻った。歩いて行った記憶はない。葬儀に戻り椅子についた記憶もない。気付くと葬儀は終わっていた。隣に麗子すらいなかった。若菜は静香の遺影をじっと見つめていた。
 ふと立ち上がり、静寂の中に響く自分の足音を耳にしながら静香の下へ歩み寄る。跪き、棺桶に抱き付くように静香の顔を見つめる。
 「先輩…、私はあなたの命に見合うほどの人間なんでしょうか…。」
かすれた声で呟いた。綺麗な顔だ。静香が息を引き取った瞬間の血塗れの表情を忘れてしまいそうになるぐらいの綺麗で穏やかな表情だ。その美しすぎる穏やかな顔の静香に若菜は再び涙を溢れさせる。
 「デートしたかったな…。駅前のケーキ屋さん、行きたかったな…。もっと真剣に指導受けとけば良かったな…。ふざけた私の頭をまた殴って欲しかったな…。先輩の突っ込み、激しくて痛いんだよなぁ…。」
その痛みをもう味わえないのかと思うと若菜は胸が苦しくなる。
 「先輩…」
若菜は父親を亡くした時と同じように、ずっと静香に寄り添っていた。


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