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LADY GUN
【推理 推理小説】

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終わらない物語-23

 「どこだ!田口はどこだ!!」
次々に確保される覆面男達。覆面をはがし顔を確認していくが田口の姿が見当たらない。必死で探す刑事達。正面にある部屋に突入しようとする。
 息絶えそうな静香の酷い姿を抱きしめていた時、騒然とする現場の中、若菜は田口の姿を偶然にもとらえた。今まさに刑事達が入って行こうとしている部屋の前で一瞬こちらを向きニヤリと笑った田口を若菜は見た。確実にあの部屋に入って行った。しかし若菜はあの部屋に突入しても田口はいないと感じた。あの笑みは捕まらない自信があったからだろう。必死で田口を追い部屋のドアをこじ開けようとする刑事達達の声を受け流しながら、若菜はどんどん体温を下げていく静香の体を擦りながら呼びかけていた。
 「先輩ぃ…、先輩ぃ…」
口元の血を自分の洋服でぬぐい取る。
 「おい!皆川!皆川!!」
石山が静香の姿を見つけ慌てて走ってきた。
 「いかん!救急車だ!救急車を呼べ!!」
 「し、しかしこの山奥、すぐには…」
 「いいから呼べ!!」
静香の息がない事は見て分かった。しかしあの時から苦しみ、そして必死で戦ってきた静香を何の努力もせずにみすみす死なせる事だけは許せなかった。
 「何て事だ…。皆川…、皆川ぁぁ!」
石山の顔がクシャクシャになる。涙が大量に流れた。
 「1人で背負い込むなんて…!畜生!!」
気付いてやれなかった自分に怒りを感じた。
 「皆川…」
中山が棒立ちになる。信じられない。頭が真っ白になる。
 「わ、私は…大事な部下を2人も守れなかった…。」
茫然自失になり膝から崩れ落ちた。何も考えられなかった。誰よりも捜査に尽力を尽くし、誰よりも汗を流した静香の最悪の事態にやるせない怒りと深い悲しみに包まれた。
 一方、監禁されていた婦警達はようやく保護された。身元照合を行った結果、殺害された弓野聖子以外の婦警の無事が確認された。しかしその中に加藤綾美の姿はなかった。
 「くそ!離せ!!触んじゃねぇ!!畜生!!徹の野郎!裏切りやがったな!!」
確保された覆面男の中に喜多も紛れていた。
 「おまえは二度と出れないからな!覚悟しとけ!!」
刑事に連行される喜多。逃げ遅れた様子だった。
 静香の遺体は石山が車に乗せ、静香から離れようとしない若菜と一緒に山を降りて一番近い総合病院に搬送された。しかし死亡が確認された。改めて石山の野太い声が響き渡った。
 俊介が拘束を解かれたのは既に静香の遺体が運び足された後出会った。手足を鍵付きで拘束されていた為に外すのに時間がかかったからだ。体が自由になると俊介は下半身を露出している恥かしさなど忘れ、静香が銃弾に倒れた場所に立ち尽くした。
 「静香…」
何も出来なかったどころか静香の足手まといになった自分の不甲斐なさに茫然自失の俊介。目の前で起きた事全てがショックだった。ゆっくりとしゃがみ、床に付着した静香の血液を指で拭うと、溢れた涙が止まらなかった。

 1人の犯罪者と1人の刑事の死が様々な人間の人生を狂わせていくのであった。


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