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LADY GUN
【推理 推理小説】

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終わらない物語-22

 怒号が響く倉庫。しかし2人の耳にはそれは届かなかった。どんどん血が溢れる静香に若菜は動揺を隠せない。静香は出来る限りの笑みを浮かべ若菜に話し掛ける。
 「あの時、私は高田道彦と銃を向けあったの…。でも私は恐怖で焦って無我夢中で引き金を引いてしまった…。目なんて開けていられなかった。とにかく怖くて気付いたら発砲してた…。その銃弾が高田に当たってしまったの。それに逆上した喜多が私に向けて発砲した。私は死んだと思った…。でもあなたのお父さん…上原刑事がその身を犠牲にして私を救ってくれたの。私は上原刑事のおかげで命を救われた…。でもあなたのお父さんは…お父さんは…」
 「先輩、喋っちゃダメ!」
必死な若菜だが、静香は言葉を止めなかった。
 「あなたのお父さんは私の身代わりになって命を落としてしまったの…。私はもう刑事を辞めようと思った。でも上原さんに救ってもらった命、上原さんがするべきだった事を私が全うしてこそ助けられた意味があるんだと思い、私は刑事を続けた…。いくら恩返しをしたくても出来ないもどかしさをずっと持ってた…。でもようやく恩返し出来たような気がする…。」
 「喋らないで!!私は今から先輩に恩返ししなきゃいけないんですから!」
 「ハァハァ…、若菜…?憎しみは憎しみしか生まない…。人を憎んで刑事をしてはダメ…。私の願いはたくさんの人間を苦しめた田口を捕まえて…、それだけよ。憎んではダメ。殺してはダメ。刑務所に入れて自分の犯した罪を悔い改めさせて…?わかった?」
 「分かったから…分かったからもう喋らないで…」
大量の涙が溢れる。
 「ハァハァ…ううっ…若菜…。私はあなたを本当の妹のように思ってたんだよ…?あなたが一人前の刑事になる日を楽しみにしてた…。あなたの純粋な心が大好きだった。私は最後の最後で全てを失ってしまった…。でも若菜…、私は最後まであなたと俊介を愛していたことだけは誇りだよ?こんな情けないかっこしてるけど…、それだけは誇り…。うっ!」
吐血する静香。にますます涙が止まらない。
 「先輩!!」
それでも笑みを作る静香は息を切らしながら続ける。
 「ハァハァ…若菜…、お父さんはあなたが刑事になろうとしていることを知ってたわ…?私のとは別にあなた用のLADY GUNがそこにある…。若菜のWという文字が彫られているわ?あなたはそれでお父さんと私がなし得なかった事を成し遂げて欲しいの…。お父さんの意志を…」
再び吐血する静香。顔!から血の気が消えていく。
 「ハァハァ…、若菜…、あい…し…て……る…」
ゆっくりと瞼を閉じていく静香。体がガクッと沈んだ。
 「先輩!?先輩…!?嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
若菜の悲しき叫び声が天を突き抜け暗闇に悲しく響き渡った。
 
皆川静香、2011年2月3日、殉職…。享年28歳。


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