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Sincerely -エリカの餞-
【二次創作 その他小説】

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002 平穏な学校生活・後-5

 同じく学級委員長の筒井惣子朗は、同じ野球部所属の竜崎圭吾と共に、女子主流派のメンバーで一際賑やかなこの二人組、ムードメーカーの香草塔子と幸路知佳子と教卓の付近で輪を作り、シャープペンシルを握り締めながら旅行の資料に目を落としていた。

「筒井くんと竜崎くんなら、あたしらがなにやらかしても平気そうな気がするよ!」
「ねえー!」

「……ははは」

 天然ボケとトラブルメーカー。先が思いやられた圭吾の乾いた笑い声に気付いた者はいなかった。


 女子の中でも特に絵に描いたような優等生のこの二人組、武藤灯里と羽村唯央(女子十三番)は、男子中間派の中でも比較的大人しめで無愛想な金見雄大(男子四番)と、少女のように小柄な森下太一(男子十九番)と同じ班になっていた。とは言え、クールな灯里と大人しい唯央と雄大なので、会話らしい会話は特に生まれなかった。それなりに人懐っこい太一も、空気を読んで沈黙せざるを得ないのだった。


「行き先はしっかり者の二人にまかせるね、よろしく」
「菫谷お前、少しは協力しろよ……」

 あまり上手く行っていなさそうな灯里と唯央を心配しつつ、七瀬和華(女子十一番)もまた、今後が思いやられていた。大食いで有名な関根春生(男子七番)はともかくとして、男子中間派に所属しているのが不思議なくらい生活態度の乱れた男、菫谷仁(男子六番)と同じ班になってしまったからだ。不真面目でいい加減、あまつさえ協調性は皆無──容姿端麗と名高いのに勿体ないと思う。和華は深手珠緒(女子十四番)と顔を見合わせつつ、張り付けたような愛想笑いを浮かべるのであった。


「サキ、どこ行きたい?」
「そうね、花菜が私のために決めてくれたところなら、どこでもいいわ」

 百合の花にでも囲まれていそうな、まるで別世界に迷い込んでしまったような感覚で、小田切冬司(男子三番)と目黒結翔の二人は、仲陸ましげに談笑する小日向花菜と和歌野岬を呆然と眺めていた。彼女たちは普段、白百合美海や間宮果帆、八木沼由絵と五人で行動することが多いのだが、中でもこの二人は異色な世界観を醸し出していた。男子用の制服ズボンを愛用する等、大柄で男勝りな花菜と、小柄で可憐な岬は宝塚コンビ≠ニの異名があり、ある意味このクラスの名物のような存在である。
 冬司と結翔が普段特に親しくしている運動部所属の他二人も、色々な意味で騒がしい女子二名と組まされたことを思えば、ある意味、一番の貧乏くじを引いたのは自分ら体育会系グループなのではないかと、彼らもまた、不安に駆られるのであった。


「お前と同じ班になるとはねえ、荷物持ちはまかせたわ!」
「ちょ、無茶言うなよー、間宮の方が俺より力ありそうじゃん!」
「あははは、本堂くんそれ失礼すぎー」
「俺の荷物も頼むわ。白百合のは俺が持ってやるからな」
「なんで夏季のまで俺が持つんだよ!」

 多分、誰が見ても一番楽しそうにまとまっているのはこの班であった。本堂空太と間宮果帆を中心として愉快な雰囲気が広がり溢れている。明るくて可愛いと名高い美海と、綺麗で格好良いと名高い果帆と同じ班ともなれば、男として悪い気はしないと言うものである。新垣夏季はだらりと鼻の下を落とし、終始にやけ面を隠せないほどに浮かれるのであった。


「沖縄旅行、楽しみだな〜」

 秋尾俶伸と千景勝平に微笑みかけながら、八木沼由絵はそう呟いた。





2010/10/06 PM14:24〜


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