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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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星司の過去その2-2

陽子は一旦話を区切ると、目の前のアイスティーを一口含んでから続きを話した。

「星司がその電車に乗ると、直ぐにその子に気づいたそうよ。とても目を引く可愛い子だけど、その内面は傲慢で我儘な悪意を持っていたから」

優子は但馬母娘の心の醜さを想像した。

「その子が何をしようとしてるのかは星司には直ぐにわかった。遊ぶ金欲しさに、目の前に居る誠実そうなサラリーマンに痴漢の冤罪を掛けて、示談金をせしめようとしてたのよ」

「まさか…」

優子が今までの人生で想像もしなかった事だ。

「若い頃特有の身勝手さだけだったらまだ良かった。でも、その子はただ単にお金欲しさだけじゃなかった。その子はその行為で相手の人生が崩壊するのを楽しんでいたのよ。ゲーム感覚でね」

「うそでしょ…」

気の良い優子は胸が苦しくなってきた。

「本当よ。まだ浩司さんに対する憎さが有った分だけ、但馬さんが可愛いくらいよね」

陽子が笑顔を引きつらせた。しかし優子には言葉が出なかった。

「その子が今までやっていたことを瞬時に理解した星司は、車両の中を移動してその子に近づいた。そしてその子の耳元で『彼の人生が壊れるからやめなさい』って囁いた。今まさにしようとしていたことを止めるために」

優子は突然囁かれた子の吃驚した顔を想像して少し胸が晴れた。

「優子ちゃんも、自分の悪事がバレると誰もが驚くと思うでしょ。でもその子は違った。星司に向かってニヤリと微笑むと、星司の手を掴んで『この人痴漢です。誰か助けて下さい』って大声で叫んだのよ」

優子は一瞬で再び胸が苦しくなった。

「えっ!で、でも、周りに人が居たんでしょ。最初のターゲットの人とかに言えば直ぐに冤罪だってわかったはずよ」

「いつもの星司だったら回避できたでしょうね。初めにターゲットの男の人に注意を与えてから、その子を止めたら良かったと思うわ。でもこの日の星司はダメだった。その子がまだ若かったから軽く踏んでたの。その子の悪意が強過ぎて、その子に仲間が居たのを見落としていたのよ。その仲間の証言が決定的だった」

「そ、それじゃ…」

「そう、お決まりの通りよ。乗車客に押さえつけられた痴漢は次の駅で降ろされ、警察に連れて行かれる」

「でも、冤罪だって言い続けたら大丈夫じゃないですか。その子の事を調べて貰ったら、何回も痴漢に遭ってることがおかしいってわかるはずよ」

涙目で訴えかける優子に、陽子は諭すように言った。

「あのね、優子ちゃん。社会と隔離している星司にとって、痴漢の汚名を着せられる事なんて問題じゃないのよ。示談金なんて直ぐに用意ができるしね」

「じゃあ、どうして直ぐに示談に持ち込んで釈放して貰わなかったんですか」

「優子ちゃん、星司はね。『各務星司』なのよ、わかるでしょ」

「あっ!」

興奮していた優子も気づいた。

「公権力に星司の事が知れたら、網を巡らせている家に直ぐに伝わる。星司は逮捕拘留されてからも黙秘を続けるしか無かった」

「じゃ、じゃあどうなったの?」

「48時間の拘留期間でも一切喋らない。その犯人の事を警察から聞いたその子が焦れたのよ」

「で、でもその子が焦れたとしても、黙秘してたらその子にもどうしようもないじゃないですか」

「星司はね、逮捕される時に一つだけおかしいことに気づいたのよ。自分のセカンドバッグが見当たらなくなっていたことにね」


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