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LADY GUN
【推理 推理小説】

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密約-6

 慌てたのは背後を追跡していた覆面パトカーだ。急発進に遅れを取る。すでに50メートルは離されてしまう。直ちに発進、加速するもその差は100メートルは離れてしまった。田口の運転する車両は右折した。遅れて右折した覆面パトカーを運転する山下刑事は目を疑う。
 「な…!」
目の前に追いかけていた車両と全く同じ車両が10台走っていた。
 「あんな特殊車両がどうしてこんなたくさん集まってるんだ!?」
混乱してしまう。ナンバーまで同じだ。
 「どういう事だ…?」
同乗していた金沢も焦る。
 「こ、これではどれが本物か分からない…。」
その混乱の隙に、その同じ車両が一気に散る。四方八方に走り去る車両に、どれを追いかけていいか分からない。何の確証もないまま真っ直ぐ前を逃走する車両を追いかけてしまった。追いかけていた車両は赤信号を突っ切る。慌てたまま追跡していた山下らの覆面パトカーは交差点を赤でさしかかった時、横から進入してきたトラックと激しく接触してしまう。
 「ぐっ!!」
トラックのスピードというより、覆面パトカーの自らの勢いでトラックにぶつかり斜め前方のビルに突っ込んで停まった。ボンネットから煙が吹いている。
 「クソ…やられた…」
歪んだドアを何とかこじ開け車外に出た山下。携帯を取り出し電話をかけたのは警視庁総監だ。
 「すみません…見失いました…」
警視庁総監は無言で電話を切った。
 「クソっ!!」
携帯を壊れてしまう程に握り締めた警視庁総監だった。
 その時、携帯がなった。相手は誰だか想像がついた。電話を取る。
 「もしもし、何を勝手に追跡してんだよ?」
 「私は知らない。管轄の人間が勝手にした事だろう!約束通り喜多和典を返してやったんだ。だから…」
 「俺にギブ&テイクの精神はないからね。約束、破るわ。」
 「お、おい!話が違うだろ!?」
 「そりゃ当然だろ。約束破るんだから。それよりお楽しみが増えたよ。警視庁総監が犯人と密約を交わし収監者を解放しただなんてさ!」
 「ふ、ふざけるな!!内密にすると言ったじゃないか!!」
 「だからー、俺と約束なんてするのが間違いなをやだよ!間抜けだね。トップが間抜けだから日本の警察は間抜けなんだね!いい国だ、日本♪」
 「お、おまえ…!」
顔を真っ赤にして怒りに体を振るわせる警視庁総監。
 「ま、もう少しで当面の目標は達成できそうだから、そうしたら約束を思い出してやってもいいかな。アハハ。じゃあね。」
 「お、おい!!」
電話は切れてしまった。通話記録を調べれば発信地が絞り込めるだろう。しかし警視庁総監には犯人と密約を交わしたという重大な過ちを抱えている。これが公になれば大変な事になる。警視庁総監の体が震えているのは怒りの為だけではなかったのかも知れない。


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