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LADY GUN
【推理 推理小説】

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密約-3

 静香は窓から俊介が喜多和典の護送に城南刑務所に出発する姿を見た。頑張ってね…俊介が仕事に向かう時にはいつもそう思う。仕事を終え署に戻ってきた俊介に、今日会えるかな…、そう思う瞬間が幸せだったりする。しかし今日は変な胸騒ぎがした。俊介の背中が遠く感じる。愛おしさが切なさを含んでいる、そんな胸の仕えを感じた。俊介が運転する車は静香の視界から離れて行き、そして見えなくなった。
 俊介は静香の追い求める犯人逮捕の足掛かりになるかもしれないこの任務にやりがいを感じていた。早く静香を呪縛から解放してやりたい…、俊介はいつもそう思っている。正芳が亡くなってからの静香の苦悩をずっと見てきた俊介は一日ごとに増えていく笑顔を見るのが嬉しかった。この事件が解決したらプロポーズしようと思っている。密かに買った婚約指輪を運転しながら見つめていた。
 俊介にとって神と呼ばれた男が起こした過去のレイプ事件は小学生の時に起きた事件。レイプの意味も分からなかったし、テレビで報道されるニュースもどこかドラマのような感覚だった。しかし今回の犯人である田口徹は自分と同世代の青年だ。自分があの時、レイプという意味を知らなかった事に対し、すでにそれを行っていたとされる田口徹がまず驚きだし、レイプを伝承した大人がいた事にも驚きだった。俊介は今回の一連の事件に直接的に関わる事は殆どなかったが、今回重要人物であろうてされる喜多和典の護送に関われてやりがいを感じている。静香の手助けが出来るこの仕事を任された事は誇りに思う。
 城南刑務所に着き守衛に身分を明かすとすぐに入所を許された。すでに移送用の車両が用意されていた。
 「ん?」
車両を見て違和感を覚えた。通常車両側面に〜県警といった管轄を示す文字が書かれているものだが、その表記がなかったからだ。しかしパトカーでもないし俊介自体が移送車を見慣れていなく、そんなもんなのだろう…、そう思い大して気にとめなかった。
 するとその移送車に乗り込む為に手錠などで拘束された喜多和典が厳重な警戒態勢のもと、姿を現した。物々しい雰囲気の中、不敵な笑みを浮かべる喜多和典が印象的だった。動揺は全く感じられない。ある意味神妙な表情の署員達を楽しむかのような、そんなふてぶてしさをも感じた。最後まで不敵な笑みを浮かべながら車両に乗り込んだ喜多和典だった。
 「よろしく頼むよ。」
城南刑務所長、三船健司が直々に俊介に言った。
 「はい。」
力強く答える俊介。すると三船が周りを気にするよう耳元で小声で言う。
 「警視庁本部から正式な手続きもなかった異例の移送だ。公にしたくない何かがあるに違いない。十分気をつけて欲しい。」
重々しい声が耳に響く。
 「了解致しました。」
三船にはいつも捜査で世話になっている。何度か飲みに行った事もある間柄だ。警視庁本部を疑う気持ちを伝えて来た事はそんな2人の良好な関係の現れでもある。敬礼をして車両の前部座席…助手席に乗り込む。
 「わざわざご苦労さ〜ん!」
仕切りのある後部座席から喜多がなめた口調で話しかけてきた。ルームミラーでその憎たらしい笑みをチラッと見て無言を貫く俊介。
 「あ〜あ、無視されちゃったよ。寂しいなぁ…。」
緊張感のかけらもない喜多。まるでこれから釈放でもされるかのようなリラックスぶりだ。苛つく気持ちを抑えていると車両は走り出した。


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