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LADY GUN
【推理 推理小説】

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密約-11

 (マジかよ…!?)
エレベーターが到着した階を見て焦りを覚えた島田。18階に到着したからだ。警視庁本部のビルは18階建だ。すなわち最上階。という事は…。
 エレベーターを降りると警備員が2人立っていた。そして扉の前に立つ2人。見上げると警視庁総監室の文字が見えた。島田も静香も緊張と動揺が隠しきれない。
 「島田署長をお連れいたしました。」
案内人がそう言うと中から声が聞こえた。
 「中へ。」
案内人が扉を開き中へは2人を促す。
 「失礼します。」
2人が中に入ると案内人は扉を閉め外に出た。
 迫力がある。何とも言えない威圧感を持つ男、目の前にいるのは警視庁総監だ。パトカーごと突っ込もうとしていた勇気はいずこへ…、直立不動で敬礼する島田と静香。そんな2人に警視庁総監がゆっくりと歩み寄る。緊張が走る。しかし…、あまりに予想だにしなかった行動に出た警視庁総監に島田と静香は唖然とする。
 「申し訳ない…!」
何と警視庁総監が2人の足元に跪き土下座をして謝罪したのであった。
 「は、はい…??」
意味が分からずキョトンとする島田。土下座をやめるよう促す言葉すら出て来ない程驚いた。額を床につけたまま言葉を発し始めた警視庁総監。
 「私は田口徹に娘を誘拐された…。」
 「えっ…?」
初めて聞く事実に衝撃が走る。
 「田口徹から電話があり、娘を返して欲しければ喜多和典を引き渡せとの事だったんだ。犯人側が用意した運転手が乗ってくる、やはりあっちが用意した移送車に喜多を載せて刑務所から出すよう指示があった。そして護送役に中央署の角田俊介という刑事をつけろ、と。」
 「な、何ですって…?」
耳を疑う静香。
 「念のため、その車を追跡させたのだが、振り切られた。その後また田口徹から電話があり、やっぱり娘は返さないと…。初めから交換条件を守るつもりなどなかったんだ、田口は。まんまとやられてしまった…。君の署の人間まで犠牲にしてしまった。申し訳ない…」
突然の事で言葉が出なかった。少しの沈黙の後、島田が言った。
 「どうしてそれを早く言ってくれなかったのですか…。」
 「私はずっと自分から娘と距離を置いて生きて来た。警察官にとって家族は犠牲になりやすいものだから。余計、警視庁総監という立場になりそれを強く意識してきた。自分が誰かから恨みを買った時、家族は一番の標的になりうる存在だから。常に気を使ってきた。しかし恐れていた事が現実になってしまった。私は未だかつてない恐怖感を覚えてしまった。立場を忘れ、1人の父親になってしまった。自分の娘を助けたい一心で私は正しい判断ができなくなってしまったんだ。許してくれ…。」
気持ちは痛い程分かる。とても責める気にはなれなかった。


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