ソレゾレノケツイ-9
「魔物だから、分からない事が多くて戸惑う姿とか、魔物の時の目とか、艶々の鱗とか、もっさりした動きとか……」
とにかく、今は何を見ても可愛く感じるらしい。
「……恋は……盲目ね……」
リュディは呆れた顔を上げてテオを見た。
「へへ」
テオは頬を染めてにっこり笑って見せる。
そこへパタパタと軽快な足音と、騒がしい声が聞こえてきた。
「リュディっリュディっリュ……ディ……」
音の主、パルの目に映ったのは仲良く抱き合っているリュディとテオ。
「…………」
「…………」
「…………」
暫しの沈黙の後、パルはくるりと回れ右して去って行った。
「まっ……ちょっ……パルっ!」
絶対に勘違いされるであろうシチュエーション。
テオは慌ててリュディを引き剥がし、パルを追いかけて行った。
残されたリュディは、ランスの言葉が真実であれ嘘であれ、ちゃんと向き合ってみようかな、と気持ちを固めたのだった。
「パル、パルティオっ」
足早に進むパルの手をテオがパシッと掴む。
「えっと、邪魔してゴメン」
一応、立ち止まったパルだったがテオからは視線を反らしていた。
「邪魔じゃねっつうの……つうか、やっと掴まえた」
苦笑して息を吐いたテオは、掴んでいたパルの手を放しポリポリと頭を掻く。
「まあ、何だ……ちょっと急過ぎたよな……」
「え?」
呟くようなテオの言葉に、パルは思わず彼の方に目を向ける。
テオはちょっと目を伏せて、頭を掻いていた手を腰に当てた。
「いや、お前が困ってんのは可愛いんだが、逃げられちゃそれも見れないワケで……」
きょとんとして見ているパルと目を合わせたテオは、人差し指をパルの鼻先に突き出す。
「エザルの吸血蔦の問題が片付くまで、オレの言った事は忘れてくれ」
「何で?」
忘れて良い内容では無いと思うのだが。
「じゃねぇとまともに動けねぇじゃん?とりあえずあの話は置いといて……だ。やる事やってスッキリしてから、ちゃんと話そうぜ?」
当初の目的を達成してから、個人の問題を片付けよう、と提案するテオにパルはこくんと頷いた。