ソレゾレノケツイ-7
「まずは逃げずに、面と向かって思っている事を伝えてみなよ?テオドアだって君が嫌がる事はしない筈さ」
好きなら尚更。
「……でも……」
(食べたく無い)
逃げている本当の理由は、魔物の本能がテオを欲しがっているからなのだ。
魔物にとって人間は食べ物と同列。
特にテオの『精』が極上だったので、固形物が食べれるようになった今、肉まで食べたくて仕方が無い。
(……分かんないよね……)
好きなものは食べて自分の力にする魔物……好きなものは大事にする人間……そこは大きな違いだ。
パルは人間のそういう所に憧れて、そうなりたいのだが魔物の本能が邪魔をする。
「パルティオ嬢?」
黙り込んでしまったパルをランスが心配そうに覗き込み、パルはハッと我にかえった。
「なんでもない。話聞いてくれてありがと♪」
パッと顔を上げたパルはにっこりと笑い、ランスも安心して微笑む。
「あ。除草剤出来たんだね。出かける準備しなきゃ」
「私も。昼過ぎに出発にしよう」
「分かったぁ」
簡単に打ち合わせをして別れた2人は、お互い旅立ちの準備に勤しむのだった。
「手伝いって?」
リュディの後ろを歩くテオは、無言で進む彼女の背中に声をかけた。
声をかけられたリュディはピタリと止まり、ぶつかりそうになったテオは慌てて歩みを止める。
「どしたあぁぁっ?」
ぐるっと振り向いたリュディはテオの胸ぐらを掴み、あり得ない力でテオをグイグイ押して人けの無い場所へ押し込んだ。
「何だ何だ?!」
肩を揺らして息を整えているリュディを見て、テオは困ったような感じで彼女の言葉を待った。
「ランス様って変なの?」
「は?」
「遊びよね?からかっているだけよね?」
いつもはポツポツ喋るリュディがスラスラ話すのを、テオは驚いて見つめる。
「そうよね。あり得ないわ、こんな男か女か分からないような……」
「ああ、プロポーズされたか?」
「ぷっ……プっ……」
あっさり言い当てたテオに、リュディは真っ赤になって言葉を詰まらせた。
「何だよ。嫌じゃねえなら受ければ?」
「そんな簡単な話じゃ無いわ!ファンの王子よ?!」
受けてみて、やっぱりダメじゃ済まない。
受けるにしろ断るにしろ、ちゃんとしっかり考えなければならないのだ。