ソレゾレノケツイ-6
ランスはヨシヨシとパルの頭を撫でて、こっそりため息をつく。
(早急過ぎだろう?テオドア)
いくら自分の気持ちに気づいたからといって、それを押し付け過ぎだし応えを求め過ぎ。
(……ふむ……人の振り見て我が振り直せ……か……)
ランスの場合はそこまで急かしてはいないが、急ぎ過ぎなのは同じかもしれない。
何せ世界の中心、島国ファンの次期国王の妻になってくれと言っているのだ。
欲深い女性なら喜んで飛び付く話だが、常識ある普通の人間なら遊ばれているか、からかわれていると思うだろう。
(確実にいった方が良いかな)
リュディの心をゆっくり溶かし解して、じんわりと侵食していこう。
諦める気はさらさら無いのだから時間がかかっても構わない。
ランスはパルの頭を撫でながら反対の手を顎に当てて、ふむふむ頷いた。
「……ねえ、人間って人間しか好きにならないでしょう?」
ランスが何を考えているか知りもしないパルは、きっと自分達の事を考えているのだろうと思い聞いてみる。
「え?う〜ん……どうかな?私は違うと思うよ?」
「どうして?」
「私の周りにはいろんな人が居るからね。テオドアの両親をはじめ、男同士で好き合ったり、魔獣ハーフと結婚したり……」
「魔獣のハーフ?」
魔獣は魔物のパルにとっては祖先になる。
ハーフとはいえ、その魔獣と愛情を交わす人間が居るとは。
「うん。だからテオドアが魔物のパルティオ嬢を好きだと言っても特に驚かないかな?」
「でも、でも……人間は馬や猫と結婚しないでしょう?」
「ハハハ、まあね。でも、死ぬまで一緒に居る事は出来るし……パルティオ嬢は馬や猫じゃないだろ?」
「そこよぉ」
「え?」
ランスは思わずどこだい?とキョロキョロした。
「アタシ人間型になれるじゃん?しかも、1番始めにエッチしちゃったし……」
つまり、人間の形をしていて性交が出来るから好きだと思い込んでいるのではないか?と言いたいらしい。
「もしかして、パルティオ嬢は嫌なのかい?」
「ち、違う違う!嬉しいって言ったじゃん!」
「なら、それで良いんじゃないかな?」
嫌なら徹底的に拒否、嬉しいなら覚悟を決めて受け入れる。