ソレゾレノケツイ-12
「……やはり……ランス様は……可笑しな方です……私の知っている上流階級の方々は……豪華な部屋を好みます……」
「そうですねえ、私の知っている貴族の方々も大抵はそうです」
ランスはリュディを豪奢なソファーに座らせ、自ら立ってお茶を入れる。
「ランス様っ……私が……」
「いえいえ。私、お茶を入れるの得意なんです。母は元メイドですし……まあ、ノアには及びませんがね」
彼の入れるお茶は絶品だ、とランスは誇らしげに語りつつテキパキとお茶を入れた。
ほんわりと湯気がたつカップから良い香りが漂い、リュディの緊張が少し解される。
「お茶を飲んだら一緒にお風呂に入りましょう♪」
ぶほっ
ニコニコしたランスの提案に、リュディは飲んでいたお茶を吹き出した。
「憧れていたんです♪好きな女性とのお風呂♪」
キラキラニコニコ。
(そういえば……18歳だった……わね……)
普段は王子様然としているが、今は完全プライベートで2人きり……少し垣間見える子供っぽい部分に、リュディの胸がキュンと鳴る。
「あの……でも……」
両性具有であるリュディにとって、一緒にお風呂に入るのにはかなりの勇気がいる。
「では、先に湯船に入っていて下さい。それなら良いでしょう?」
お願いお願いと、懇願する子供時代のランスがダブって見えるような錯覚。
(……可愛い……)
テオのやんちゃな子供っぽさもツボだが、普段抑えているだけにランスのギャップもかなり萌えだ。
「仕方……ないですね……」
リュディは顔をほんのり染めてランスの提案に同意した。
ランスの表情が見る間に輝き、リュディは自然と微笑む。
「でも……良いと……言ってからですよ?……約束です」
人差し指でランスの鼻先をちょんと押すリュディに、にっこりと笑顔を見せたランスは大きく頷くのだった。
思った通り豪奢過ぎるバスルームに、リュディは圧倒されるよりも呆れてしまう。
床は濡れても直ぐ乾く不思議なタイルで出来ており、足の裏がサラサラして快適。
浴槽は珍しい事に硬い事で有名なパーム石で出来ており、どうやって加工したのか首を傾げるばかりだ。
趣味が良いのか悪いのか分からないが、天井は鏡張り。