ソレゾレノケツイ-11
「先程のお話ですが……冗談や遊びでなく……本当の本気……と、受け取って宜しいですか?」
リュディは真っ直ぐに顔を上げて、ランスを見据えた。
はぐらかしたりしないように、逃げたりしないように見張る様な視線だ。
しかし、ランスははぐらかしもせず、ましてや逃げたりもしなかった。
「勿論ですとも、リュディヴィーヌ嬢。私、ランスロット=O=ファン……産まれてこのかた愛を囁いたのは貴女だけです」
いちいち歯の浮く様な台詞だが、どうやら本気らしい。
「でしたら……私を抱く事……出来ます……か……?」
本当に女性として愛してくれるのか?
愛する事が出来るのか?
リュディは祈る様に両手を胸の前で組み合わせる。
その手は緊張で震えていた。
「この身をもって証明しますよ」
ランスは震えるリュディの手を取って極上の笑顔を見せる。
「ノア、出発は明日の朝に延期と伝えてくれ」
「承知致しました」
ランスの背後からするりと現れたノアに、リュディはビキッと固まった。
そうだ、忠実な従者であるノアがランスと別の部屋な訳が無いのだ。
少し頭を下げてリュディの横を通り過ぎようとしたノアが、ちらっとリュディに目を向ける。
固まったまま目だけでノアを追っていたリュディは、ノアの目が微妙に笑っているのに気づいた。
(……良いの……かしら……?)
従者的にリュディは合格なのだろうか?
リュディの様な人間、普通はお断りの筈だが。
「さあ。リュディヴィーヌ嬢」
くいっと軽く手を引いたランスに促され、リュディは部屋へと足を踏み入れる。
いよいよだ……遂に……リュディの正念場だ。
ランス達にあてがわれた部屋はきらびやかだった。
それはそうだ……お忍びとはいえ、素性を知っているクラスタ側がファンの次期国王に一般人と同じような部屋を貸す訳が無い。
それは分かっているのだが、その豪華ぶりにリュディはぽかーんと口を開けてしまった。
リュディだって一応貴族だし、貴族の舘のお抱え薬剤師として働いてはいたが……比べものにならない。
「私はいいって断ったのですが、ノアがねえ」
王族たるものそれ相応のなんたらかんたら……と長々しい理由で不本意にも豪華絢爛な部屋らしい。