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Sincerely -エリカの餞-
【二次創作 その他小説】

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001 平穏な学校生活・前-3

「女子はほぼ決まりだな」
「そうねー。萠川さんや朝比奈さんたちは、どうする? どちらかが妥協しなくちゃいけないけど……」
「えー、アヤ、絶対マリアたちと一緒がいいー」

 オレンジのグロスが塗られた唇を尖らして、またしても不満声を上げたのは渡辺彩音である。

「ねえヒナ、マナ、同じがいいよねー?」
「えー、そりゃ、うん! もちろんだけどー!」

 急に話を振られた野上雛子(女子十二番)が、こちらも色素の薄いツインテールを上下に揺らして大きく頷く。もう一人の鈴茂まなみ(女子八番)は、ガーリーなタイプの短髪を軽く上下に揺すったのみで、特に返事もせず頬杖をついている。

「渡辺ー、お前さっきからうるせーぞー!」

 そうガヤを飛ばすのは福地旬(男子十五番)だった。線が細く男性にしては小柄、彼も色白で一見整った顔立ちをしているが、小さめの鼻と薄めの下唇には銀色のピアスが煌めいている。そろそろ眉毛にも開けようと思うんだよな、と口にしたのはこの時間が始まる前の休憩時間のことである。
 彩音は旬に抗議の視線を向けたが結局はなにも言わず、すぐに萠川聖(女子十八番)の顔を伺う。彩音の後方の席で携帯電話を弄りながら足を組んでいた聖は、その視線には答えず、無愛想に発言した。

「あたし、別に委員長たちと同じ部屋でもいいけどー?」
「本当!?」

 千恵梨の表情が嬉しそうに輝く。

「うん。だって、朝比奈さんたちのグループ離すの、なんか可哀想だからさー」
「えーやだよー、アヤ、マリアも一緒がいいー」

 聖がはあっとため息を吐いて面倒臭そうに彩音に視線を向ける。

「ワガママ言うなっつーの、委員長困ってんぢゃん?」
「あ、あたしたちは別に大丈夫よ」

 千恵梨が困った顔に愛想笑いを張り付けると、それが少し気に入らなかったのか聖は僅かに顔を顰め、押し黙ってしまう。百七十センチもあろうかと言う長身と、インクのような真っ黒のアイラインでクールに整ったつり上がる目尻。あまり騒がないタイプなだけに、中々の迫力である。

「ねえ、やっぱりあたし委員長たちの部屋いこうかー? そしたらマリアちゃんたち、二組に分かれられるでしょー?」
「大丈夫だっつーの、美海はもう決まってんだから、気にしなくていいのー」

 困った人は放っておけない気質の美海がまたしても提案するが、聖はそれを不機嫌そうに頑固拒否する。バーカと、美海の後ろで果帆がやはり彼女を小突く。

「じゃ、じゃあ、萠川さんは大部屋でいいのかしら?」
「うん、いいよー」
「ちょっと待って」

 聖が答えるや否や、今まで沈黙を貫いていた問題のもう一つのグループのメンバー、榎本留姫(女子三番)が間に入ってくる。ポニーテールに結った黒髪の毛先が、柔らかくうなじの辺りに纏わりついている。留姫は落ち着きを払った口調で、淡泊に続けた。

「逆に申し訳なくなっちゃって。私、大部屋に行きたいなって思うわ」
「はあ? 別に榎本さんたち三人は固まってればいいと思うけどー」
「別に、一緒の部屋にしようね、なんて話は特にしていなかったし。それに私、一応風紀委員だから、寝る時以外あまり部屋にはいれないと思うの、だから」

 それは聖の意地っ張りな妥協(としか見えなかった)より、余程筋が通っているように思えた。千恵梨の表情が軟らかくなって、聖と留姫を交互に見比べた後、留姫を見据えた。

「榎本さん、お願いしてもいいかしら、歓迎するわ」
「ええ、よろしくね」

 そのやりとりを見届けた聖が、降参したと言うようにふっと不適に笑んで、異論はないと言うように無言で手を振るう。これにより女子の部屋の割り当ては以下で落ち着くこととなった。



【大部屋:泉沢、榎本、香草、佐倉、田無、七瀬、羽村、深手、武藤、幸路】

【小部屋@:小日向、白百合、間宮、水鳥、八木沼、和歌野】

【小部屋A:朝比奈、鈴茂、都丸、野上、萠川、渡辺】


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