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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ!W 『デッドヒート・ラバース』-1

”ジジジッ・・・ガガガガッ・・・”
「……た…大佐っ……おみごとです」
 紅き流星シュナイダーの『リュミエイラ』。連邦軍きっての天才TRライダーと称(たた)えられた彼女 で有ったが、最早これまでである。レギオン帝国最強のエースパイロット『ミューヒハウゼン大佐』の駆る、黄金のTR(機動メカ)に完膚なきまでに叩きのめされて、身動き一つ出来ずにいた。
 ミューヒもまた、そんな敵国の機動メカに、かつての恋人である『リュミエイラ』が乗っていた事など、知る由も無く。戦いの虚しさだけが、心に染みていた。

 つづく。


「こらぁっ是奈っ! いつまでもそんなアニメなんか見とらんで、勉強しろっ勉強っ! お前も来年は受験なんだ、しっかりしないといかんぞ、まったく!!」
「う〜〜ん…… 解ってるお〜…… そんぐら〜〜いっ」
 毎週楽しみにしているテレビアニメ、これだけは譲れないとばかりに、是奈は風呂上りで濡れっ放しの髪もほったらかしにして、濃い口醤油ダレせんべいを口に銜えながら、怒り心頭な父『朝霞 善太郎(あさか ぜんたろう)』のお説教など何のその、居間の片隅に踏ん反り返る36インチの大型液晶テレビの前を占領して、自分だけの世界に浸っていた。
「もおぉ〜〜〜お姉ちゃんばっかりズルーーイィ〜〜! あたし『まるちゃん』が見たぁ〜いぃ〜!」
 是奈の妹『朝霞 清美(あさか きよみ)』小学4年生は、お子様番組を見せろとせがみ、是奈の背中を叩く。
「まったく! どいつもこいつも家の娘どもと来たら…… 俺がお前等ぐらいのときは、『ウルトラ万太郎』とか『仮面バイカーV2』とか、もっと教養のある番組を見て英知をやしなった物だっ! それに引き替え最近のアニメは、全く持ってくだらんっ!」
 安物の発砲酒を煽りながら、そんな事を言う父『善太郎』のお小言も、毎度の事であった。

「あ〜〜はいはいっ。もう終りましたっ!」
 是奈は、何だかふて腐れた様にそんな事を言いながら立ち上がると、持っていたテレビのリモコンを ”ボイッ”と清美に手渡して、そそくさっと居間を出て自室の有る二階へと立ち去った。
 案の定そんな是奈の背中に向かって「勉強しろよーっ!」と、善太郎の声が飛んで来たりもするが。是奈は「べーーっ!」と舌を出して顰め面をすると、それでも黙って自分の部屋へと入って行ったようだ。
 
 口五月蝿く(くちうるさく)勉強しろと言われたところで、やりたくも無い事にそうそう手がつく訳でもなく、是奈は机の上にカムフラージュ的に開いた教科書を眺めながら、ブツブツ文句を言っていたようである。
「どうせあたしなんか頭悪いんだから、勉強したからって、今日昨日で急に成績なんか上がるわけ、無いじゃない」
 そんな事を言いつつ、机脇に置いてあったアニメ雑誌を取り上げると、ページを捲って、
「あ〜あぁ…… あたしも『ミューヒ大佐』みたいな格好良い彼氏が欲しいなぁ〜……」
 なんて事をボヤキながら、ページに映った美形のアニメキャラを見詰めて、溜息を付いたりもする。
 かと思いきや。
「ああーーっ! いかんいかんっ! あたしには田原くんと言う憧れの君が居るんだったわっ!」
 と、見ていた雑誌を放り投げて、頭を抱え込んで首を激しく振って居た。

 そんな是奈の様子を、こっそり開けた扉の隙間から眺めて居た、是奈の父『善太郎』は、
「どうやら真面目にやっているようだなぁ。好きなアニメの本を投げ出したぐらいだから、当分は大丈夫だろう」
 と、そんな事を勝手に早合点したのか、ようやく娘もやる気になりおったと、ホッと一安心。ホクホク顔で、彼女の部屋の前から立ち去っていた。


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