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Mirage
【純愛 恋愛小説】

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Mirage〜1st contact〜-11

「‥‥間に合わへんかったな」

 思わずそう洩らすと、もう一度、僕と千夏は笑った。

 僕と千夏の少年時代への回帰は、太陽とともに、海へと消えようとしていた。


再び千夏から連絡があったのはその数日後。夏休みはもう残り十日を切っていた。
「‥‥花火大会?」
携帯電話を握りながら、僕は千夏に訊き返した。
「せやで。毎年恒例やんか。ホラ、昔は河川敷まで見に行ったやろ?」
「阿呆。お前に強引に連れてかれたんやんけ。しかも毎年迷子になりよって。行かんで」
僕は昔のことを思い出しながら吐き捨てた。
「そんなこと言いながらも、結局は来てしまう幸妃くんでした」
「来てしまわんわボケっ!」
日本語がおかしいと気付いたのは言った後。
「そんなんやったらまたうちと美沙だけになるやんか」
僕はあの縁日の夜のことを瞬間的に思い出した。
「‥‥知るか」
 若干、声のトーンが落ちたことに気づかれただろうか? ‥‥いや、無いな、所詮千夏だ。所詮。
「あー、じゃ明日の7時、待ってんで! ほんならな!」
「あ、おい!」
焦れたようにそう言って、千夏は僕に反論する暇すら与えずに一方的に電話を切った。直ぐ様かけ直すが、機械的なアナウンスが彼女が電源を切っていることを告げる。
 僕は舌打ちして、携帯電話をベッドへと投げ捨てた。
 絶対、行ってたまるか。
 
 
翌日。街に漆黒の帳が下り始める夕方7時15分前。何故か僕は河川敷に立っていた。
そう、何故か。
「お、さすがやな。15分前行動」
笑いながらやってきたのは、あの縁日のときと同じ服装の同じ二人。来ると確信しているところがやたらとムカつく。
「神崎くん‥‥ごめんなぁ。またどうせ千夏が無理矢理誘ったんやろ?」
筑波が後ろから申し訳なさそうな顔を覗かせる。思わず僕は苦く笑った。
「ってゆーかな、花火8時からやんけ。何でこんな早くから集合なん?」
「何か屋台出てるらしいで」
表情をコロリと変え、筑波がうれしそうに言う。なるほど、そういうことか。
「うち、もうお腹すいたー」
千夏が口を尖らせる。
「‥‥ほんなら、行こか」
僕は浴衣姿の二人を引き連れて、屋台の出ている広場へと向かった。
 
 
広場は予想通り、人でごった返していた。わたあめやかき氷、金魚掬いなど定番の屋台が並ぶ。
「幸妃、喉渇いた」
開口一番、千夏が言う。
「どっかに自販機ぐらいあるやろ? 買ってきぃや」
「屋台出てんのに自販機て。あんたには風情とかは無いん?」
僕がそっけなく言うと、千夏が眉を吊り上げて反論する。
「いや、ジュースの屋台なんか──」
「あ、あそこにあんで」
無いやろ、と続けようとしたところへ、筑波が上から言葉をかぶせる。その指差す方向へ目を向けると、ちょっと離れたところにぽつん、と一軒だけ店を出していた。一目見ただけで怪しいとわかる。
だが、全く気にしないのか、もしくは気付いていないのか、千夏は駆け足でそちらへ向かう。何故か無駄に速い。


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