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密約旅行
【熟女/人妻 官能小説】

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後編-3

(3)


「驚いた……」
知恵子と由里は顔を見合わせて同じことを言い、若者の後ろ姿を見送った。
 マッチの交換をしたのは若い二人だった。対象とは考えていなかったので観察もしなかったのだが、改めて見ると息子と同じくらいの年齢に思えた。

「学生かしら……」
「そんな感じに見えるわね……」
由里も同じ印象を持ったようで、答えるともなく呟いた。彼らがエレベーターに消え、二人はようやく立ち上がった。

 老人と若者のどちらかを選べといわれれば若い方がいい。それは男だってそうだろう。若いということは新鮮で、逞しく、芽吹いた性が匂い立つ魅力がある。それだけを考えるなら喜ぶべきはずなのに、知恵子は複雑な思いを抱いていた。

(若いといっても……)
自分の息子と重ね合わせてしまう年恰好には戸惑いがあった。二人とも細身で逞しさのイメージとは程遠いし、何だか罪悪感を感じてしまいそうな気がした。
(大人同士なら遊びとして割り切れるが……何か心にシコリが残りそう……)
理屈になっていないのは承知していながら、知恵子はためらいを覚えていた。息子ではないけれど……。
 何度か他人に身を委ねておきながら妙なこだわりが心をよぎるのだった。

「由里、どうする?あの子たち」
「どうするって?断るの?」
「なんか、若すぎると思って」
由里は不満げな目を見せた。
「若い場合もあればおじいちゃんの時もある。それが面白さじゃない。厭なら断ってもいいけど、あたしはするわよ」
「決めたわけじゃないのよ。たたちょっと、抵抗が……」
「何言ってるの。あんな若い男、滅多に味わえないわよ」
(味わう……)
その言葉はとてもいやな語感があった。自分の心が下卑たような、さもしいような、うすら寒い響きに感じた。
「楽しもうよ。知恵、久し振りでしょ?」
「そうね……あたしから頼んだんだものね……」
 結局、迷いを撤回したのは、自分の意思でここにいる現実は否定できない事実だと思い直したからだ。今回は自分で望んだことだ。いまさら言い訳をするのはおかしなことだった。

「今回はあたしが向うへいくわ」
「おっ、やる気出てきたわね」
由里は知恵子の積極さにVサインをしておどけた。知恵子も応じて笑ったが、思いは別のところにあった。
 自分の部屋で相手を待つか、男の部屋へ行くか。これまでは由里が出向いていた。
(相手の部屋ならいつでも出て来ることができる)
自分のところだったら帰ってもらう煩わしさがある。
(済んだらすぐ部屋を出よう。いや、途中でも耐えられなくなったら、出てこよう……)
そう考えたのだった。
 決心がついたといっても気分がもやもやしているのは如何ともし難かった。

「じゃあ、行ってくる」
ドアの方へ行きかけて立ち止まると、努めて明るく言った。
「交換はなしにしようね」
どう受け取ったのかはわからないが、彼女は無言で頷いた。 


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