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密約旅行
【熟女/人妻 官能小説】

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後編-1

(1)


 年末近くになって由里から誘いがあった。正月の三日の初詣ツアーにキャンセルが出たというものだった。
「姫始めっていうじゃない」
「それは無理よ」
知恵子は笑いながら断った。
「お正月はだめよ。主人の実家に行ったり、人が来たりいろいろで。あなたは行かないの?」
「もう三年行ってない。風邪ひいたとか何とか理由つけて。主人と孫が行けば向こうは満足なのよ。嫁なんていないほうがいいんじゃないの?」
「たぶんそうでしょうけど……」
話を合わせながらも行くのは不可能だと答えた。

 友達同士とはいえ、半年で二回も旅行しているのだ。主婦が家を空けるのは気を遣うものである。由里のところは考え方がドライのようだが、知恵子にはできない。
「主人は長男だし、長男の嫁が行かないわけにはね」
常識人ぶったことを言いながら、自分がこの半年どれほどのことをしてきたか、思い浮かべていた。

 三人の男とセックスをして、由里とは女同士で初めてアクメを知った。思えばなんと淫乱で、大胆、奔放であったことだろう。ふと怖ろしくなることがある。
 由里は、ばれなければ何もなかったと同じ、という考えのようだが、『秘密』が心に残るのは必然で、どうにも棄てようがない。その秘密が一つ、二つと増えていく。それらの重みをいくつまで抱えていられるか。新たな欲望は枯渇することなく溢れ出てくるけれど、自身を苛む気持ちもふと顔を覗かせるのだった。

 その後、二月にも電話がきて知恵子は都合がつかず断った。その時、由里は貴恵と組んで出かけたようだ。夜の場面を想像して疼いた。
 それからは他人の味を知った肉体は時に悲鳴をあげるほどに悶えるようになった。夫の慰めが物足りなくなって、毎回必ず残り火がくすぶった。


 またとない好条件が重なったのは三月末のことである。息子が友人と沖縄旅行に出かけることになり、四日間家を空けることを知った翌日、夫の出張の話が急に決まったのだ。それも一週間!
(こんなこと、もう二度とない……)
結婚してからこれほど自由な時間を持てることがあっただろうか。
 知恵子は翌朝由里に電話した。

「二十五日から二十八日まであたし一人なの。ツアーの話、ない?」
冷静に喋っているつもりだったが、隠した意気込みが伝わってしまったようだ。
「なんだか、やる気満々じゃない?」
「ふふ……だって、しばらくぶりだもん」
素直に答えたのは気分が乗っているからだと思った。

 由里は貴恵に訊いてみると言い、翌日には成立の返事がきた。
「早いのね」
「行きたい男はいっぱいいるんだって。でも同じ相手には当たらないからね」
「そうなの?」
「貴恵がチェックしてるから。親しくなると感情が入るでしょう?間違いの元なのよ。それにそのほうが新鮮味があるし」
「そうね……」
話しながら体が熱くなってきた。

「行き先はいま探してるから、決まり次第連絡するわ」
「わかった。待ってるわ」
電話を切って、知恵子は腰砕けのようになって床に座り込んだ。
(あたしはいったい何をしているんだろう……でも、何もかも忘れて『女』になりたい……)
乳房を揉んで目を閉じた。

 二日後に日程とツアーの連絡を受けた時、知恵子はある提案を考えていた。
「小諸城と上田城の桜見物だって。別所温泉」
「お願いするわ。……ねえ、由里」
説明を聞いたあと、知恵子は言った。
「前の晩、うちに泊って一緒に行かない?」
自分でもちょっと甘えたような言い方だと思った。
(由里を抱きたい……抱かれたい……)

「ふふ……」
由里は知恵子の期待通りの含み笑いを洩らした。
「いいわね。そうしようか……」
「お酒飲もう」
「遅刻しない程度にね」
「うん……」
(また秘密が増える……)
由里が艶めかしい笑いを返してきて耳がこそばゆかった。


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