アイノカタチ-6
リュディはクスクス笑った後、ふっと真面目な顔になってテオに向き直った。
「テオが……パルに何を教えたいかは分かる……だったら……テオもパルに教えたい気持ちを向けて……」
「?」
リュディの言っている意味が分からずに、テオは目を瞬く。
「今のテオは……擬似恋愛をパルに押し付けているように……見える」
人間の恋愛はこんな感じと、やって見せてパルを振り回しているように、リュディには見える。
「パルが……人間の愛情が分かった時……その気持ちをテオに向けた時……テオは受け止められる?」
リュディの言いたい事が分かり、テオはハッとした。
パルが人間の愛情を知った後の事を、全然考えていなかったからだ。
「私には……テオがパルをからかっているようにも見える……」
「そんな……つもりじゃ……」
「分かってる……ただ……覚悟が無いなら……もう止めて」
今ならからかっただけでも大丈夫だが、これ以上やってパルが傷つくような事になったら許さない。
リュディにとってパルは親友だから。
「うん……分かった……」
テオは先程よりも落ち込んで手元に視線を落とした。
(リュディの言う通りだ)
テオがした事は、人間の中に居ながら、人間の感情に疎いパルを面白がっていただけ。
偉そうに教えてやるとか言っても、テオ自体そんなに経験がある訳でも無いのだ。
(何やってんだか……)
パルがテオを避けるのも当然だ。
魔物だから本能的に分かるのだろう……相手の本心が。
パルの本能はテオを警戒し、仲間と認識していた意識と相反して避ける行動に出た。
(帰ったら謝らねぇとな)
テオがやりたかった事、パルに教えたかった事、全部話して謝ろう。
もう、パルが戸惑ったり困ったりするような事はしないと。
(うん。そうしよう)
パルの戸惑う表情が見れなくなるのは残念だが、避けられてしまうのはもっと嫌だ。
そう考えたテオは、とりあえずベランナに集中する事にした。