アイノカタチ-23
じんわり溶けて隅々まで染み渡る感じだ。
「んっ……んん?!ん゛〜〜〜〜!!」
そのままじわじわと押し倒されそうになり、パルはテオの胸をドンドン叩いた。
「ん?」
「ん?じゃないよぅっ何すんの」
「ナニするつもりでいるんだが」
「こんな所で?!」
「お?言うねぇ。まるで人間の女みたいだ♪」
「じゃなくてっ大体、アタシ食べなくて大丈夫なんだってば」
「うん♪」
にっこにこして答えるテオにパルはパクパクと口を動かす。
「人間にとってセックスとは?」
突然質問されてパルはパクパクしていた口を1度閉じて、ちょっと考えてから答えた。
「欲求不満解消と愛情表現?」
「そ。で、オレが大事にしたいのは?」
「愛情表現?」
「つまり?」
食事でも無く、欲求不満解消でもないこれは。
「愛情……表現?」
「正解♪」
嬉しそうにチュッとキスをしたテオとの会話を、唖然とした顔のパルは頭の中で整理する。
「……え……?」
「ん?」
「えっ?!ええっ!?」
やっと理解したパルは、ぼんっと赤くなった顔に両手を当てる。
「だっ……ア……えぇっ?!」
「落ち着けよ」
「やっ……だって、アタシ、魔物だよ?!」
「んなの最初から分かってるし」
「アタっ……アタシには分かんないよぉ〜」
人間のテオが魔物である自分に好意を持ってくれているのは分かるが、愛情となると話は別だ。
愛情とは「一生添い遂げる」とか「誰よりも大事」だとか、そういう事になる訳で、そんな気持ちをよもや自分に向けられるとは思っていなかった。
「だって、人間は人間にしか愛情感じないでしょお?」
「んな事言ったらウチの親は何なんだ?」
「テオのお父さんは元人間じゃない。アタシとは違うよぅ」
「……もしかして、迷惑か?」
頑なに抵抗するパルに、テオは声を落として聞く。
「……ッ」
テオの哀しそうな表情を見たパルは息と言葉を飲み込んだ。
「オレがお前の事好きだったら……嫌か?」
まるで雨の中に捨てられた仔猫の様な目に、パルの胸はきゅうぅっと締め付けられる。
「別に……嫌じゃない……ケド……」
「なら好きでいさせてくれよ。お前が迷惑だっつったら……どっか行くから」
それまでは傍に居たい、と言いながら擦り寄るテオにパルの胸は益々キュンキュンだ。