アイノカタチ-22
それはテオにとって……というか、男だったら誰でも嬉しくなる言葉だ。
「別にそんなつもりで言ったんじゃ……」
「分かってる。だから嬉しいんだよ」
パルは思った事は全て口に出す。
良い事も悪い事も区別無く、全てだ。
だからこそ、本心だと分かっているからこその殺し文句。
テオは動く右手だけでガシガシと頭を掻いて、パルの前にしゃがみ込んだ。
「テオ?」
パルは少し前に屈んでテオの顔を覗き込む。
目だけを上げてパルを見たテオは、やっと重大な事に気づいた。
わざわざパルに人間の情愛を教えてやりたいと思ったのは、それを自分に向けてもらいたかったから。
他の男を食うな、自分だけ食っとけと言ったのはただの嫉妬。
タイプとは正反対の筈なのに妙に萌えたのは、外見や性格に関係無くパルが気に入っていたから。
(つまり、好きだって事だよなぁ)
多分、初めて会った時からだ。
そうでなければ初対面でいきなり『精』を食わせてやろうなど……いくら魔物馴れしているテオでも思う筈が無い。
一目惚れしてたのに気づかず、魔物だと分かっても食われても良いと思ったのはパルだから。
(……鈍感すぎだろ……)
テオは右手で顔を覆い、肩を揺らして笑う。
「なぁにぃ?」
1人で笑うテオに、ワケが分からないパルはぷっと頬を膨らませた。
指の間からパルを見たテオは、その手を上げて彼女の頬を包む。
「オレさ、お前の事好きだ」
「?アタシも好きだよ?」
「うん。つうか、特別に好きっつう事なんだけどな」
「アタシもテオは特別だよ?」
「うん。だよな」
何だか堂々巡りな会話にテオは益々可笑しくなる。
「あのな、お前が1番って意味」
「1番?」
「うん。例えば、オレが死ぬ時に最期に会いたいのはお前」
テオの言葉にパルはパチパチと瞬きした。
「分かんなくて良いから覚えとけ。お前が……パルティオがオレの特別で1番好きな存在だって事」
テオはそう言うとパルの返事は聞かずに、彼女の唇を奪う。
「ん」
(あ……これ)
さっきキスされた時は物足りなさを感じたのに、人型で唇にされると満たされる気がする。
それは、黒海のエネルギーを受け入れた時と同じ感覚。