アイノカタチ-21
「ハハハ」
ちょっと調子の戻ったパルにしがみついたまま、テオはクスクス笑った。
「でも、黒い鱗は艶々で鏡みたいだし、長い尻尾は太くてカッケェし……やっぱ、目が綺麗だ」
テオの言葉にパルはピタリと動きを止める。
「だけど、テオのお父さんってもっと綺麗なんでしょう?」
「ああ、まあな……綺麗っつうか雄々しい感じだなぁ……つうか、比べねぇし。お前はオレとリュディを比べたりするか?」
どっちが綺麗かと問われれば、10人中10人がリュディだと答えるが、どっちが好きかと問われたらそれこそ十人十色ではないだろうか。
「……比べない」
「だろ?魔物だろうが人間の姿だろうがパルはパル。変わんねぇよ」
テオはそう言うとパルの鼻先にチュッとキスを落とした。
その時、パルの身体に変化が起きた。
どんなに頑張っても上手くいかなかった黒海からのエネルギーの流し方。
なのに、テオにキスされた途端、外からのエネルギーと自分の魔力が融け合う感じがした。
「ぁ」
今まで身体の中に異物が入っていたのが、ジュワっと溶けて細胞に染み込む感覚にパルはぶるっと震える。
ふと気づくと、呆然とした顔のテオを下から見上げていた。
「……あれ……?」
「おま……出来たじゃん!」
いつの間にか人型になっていたパルは、地面にぺたんと座り込み、パチパチと目を瞬く。
ちなみに全裸だが、パルもテオもそこは気にしなかった。
「黒海のエネルギー、自分のもんにしたんだな!」
出来た本人より喜ぶテオに、パルは何だか乗り遅れた気分だ。
「コツってあるのか?」
座り込むパルに、自分のシャツをかけてやりながらテオは問いかける。
片手でぎこちなくかけられるシャツを、自分でちゃんと肩にかけたパルは少し考えた。
「えっとぉ……テオがキスした時、ちゃんと人型でしたいなって……思っ……たんだけど……」
答えるにつれて、目の前のテオの顔が赤くなるのに気づき、パルの声が小さくなっていく。
「な、何で赤くなるのぉ〜?」
何だかつられて赤くなったパルは、火照る頬をペシペシ叩いた。
「何でって……お前……それスッゲェ殺し文句なんだけど?」
パルの言葉を要約すると『テオのキスを、人間の姿で、ちゃんと受け止めたい』そうそう事になる。