アイノカタチ-20
「見ての通り大丈夫だ。杖は用心の為にな」
テオは杖を上げて自分の足で立って見せる。
杖を持っているのは右手で、左腕は黒い鱗に包まれたままだらんと身体の横にぶら下がっていた。
「ありがとな。パルのおかげで生きてるしこの程度で済んだ。すっげぇ感謝してる!マジでありがとう」
テオは勢い良く頭を下げて暫くそのままの姿勢でいる。
しかし、いつまでもパルが何も言わないのでそっと視線を上げてみた。
パルは、物凄く縮こまってテオの前で伏せの姿勢になる。
「……ゴメンね?」
「は?」
何故謝るのか?とテオは間抜けな声を出した。
「そりゃ、お前の魔力を注がれて魔物チックにゃなったが……これだって治りゃ元に戻るだろ?謝る事じゃ……」
テオの言葉にパルは首をふるふると振る。
「え?戻んねぇの?」
さすがに少し鳥肌が立ったテオに、益々首を振るパル。
「ちゃんと戻るよ」
「んだよ。びっくりさせんなっつうの……」
それはそれでちょっとカッコイイな、とも思ったがやはり元の身体の方が良い。
「そうじゃなくて……アタシが変なプライド捨ててれば……さっさと変身してれば……テオが怪我する事無かったのに……」
「待て、話が見えねぇ……何の事だ?」
首を傾げるテオに、パルは小さな声で話す。
魔物になっていればエネルギーの流れがスムーズになると言われた事、テオが探しに来た朝、魔物になるつもりだったがどうしても変身出来なかった事……テオに見られるのが嫌だった事。
「ごめん……ごめんね……?」
パルの大きな目からボロボロと涙が零れ、地面に染みを作っていった。
テオはパルに近づくと、その鼻面を軽く小突く。
「馬〜鹿」
軽い口調のそれは、責めるような感じは全く無い。
パルは目を瞬いてテオを見た。
ちゃんとパルと視線を合わせたテオは、何時ものようにニカーっと笑う。
「マジで馬鹿だな、お前は」
小突いた鼻面を撫でたテオは、パルの鼻先に抱きついた。
「魔物なのは分かってんだからヒくハズねぇだろ?」
「だって……魔物のアタシ……可愛く無いでしょ?」
「まあ、可愛くはないなぁ……思った以上にデケぇし、動きはもっさりだし、ハッキリ言ってデブ……」
「言い過ぎぃっ!!」
パルは不貞腐れた声を出し、ブンっと鼻を振ってテオを落とそうとする。