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アネクメネ・オアシス
【ファンタジー 官能小説】

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アイノカタチ-12


「見張り台直しとけよ!!」

 バートンの叫び声に要員達はゆっくりと振り返った。
 盛大に破壊された見張り台を見た要員達は、途方に暮れた気分で再びバートン達の方を見る。
 既に小さくなった2つの黒い影を眺めながら、深い溜め息があちこちから聞こえてきた。


 身体の内側から鳴るギシリという音で目が覚めた。

「テオ!」

「テオドア!」

 えらく遠くから聞こえる自分を呼ぶ声に、うっすらと目を開ける。

「うおっ?」

 開けた目に映ったのは暗い世界。
 左腕を引っ張る痛みが、徐々にテオを現実へと戻していった。
 裂け目に落ちたのは覚えている。
 必死に腕を伸ばした事も。
 その腕が痛いという事は誰かが掴んでくれたのだろうか、と思い顔を上げると顔にボタッと生暖かい何かが落ちてきた。

「ぅおお」

 生暖かい何かは真っ赤な血だった……しかも、自分の。

『ンピ……』

 流血の原因はテオの腕にガッチリと噛みついたピィの鋭い牙だった。
 落ちながら伸ばしたテオの腕に咄嗟に食いついたのだろう。
 突然の事で手加減だとか甘噛みだとかの余裕はなかった。
 ただ、落ちるテオを引き止めようと必死だった。
 結果、思いの外力強く噛みついてしまい流血沙汰になった。
 ピィは黄色い目を潤ませて悲しそうに眉を寄せる。

「ピィ……ありがとな……」

 申し訳なさそうなピィに、テオは顔をしかめながら礼を言う。
 腕1本で命が助かるのなら儲けものだ……かなり、痛いが……。

「テオ!」

「うぃ〜…生きてる〜」

 今度ははっきり聞こえたリュディの声に、テオは情けない声を返した。

「テオドア、ノアが浮遊の魔法をかけるから底で待っててくれ」

「飛んで戻るのは?」

「すみません。飛翔魔法は使えないので……」

 浮かせる事は出来るが重力を無視して飛ばす事は出来ないらしい。

「それに底にベランナの群生があるみたいなんだ」

「お前な……」

 結局それか、とテオは元気なく突っ込む。
 ピィも崖っぷちのギリギリの位置でとどまっているらしく、引き上げるのも無理。

「失血死する前に助けに来いよなぁ」

 仕方ないか、とテオは覚悟を決めて上に声をかけた。

「ハハハ、努力はするよ」

 呑気に答えてはいるが、ランスが自分を見捨てない事は分かっている。
 ああ見えて彼は、一般市民から見て信用出来る王族なのだ。



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