アイノカタチ-11
「そんな……私という女がありながら他の女を追いかけるって言うの?!しかも、私を使って?!そうね、そうよね、所詮私は貴方の奴隷……でも、貴方が振り向いてくれるまでクラウディアは諦めないんだからぁん♪」
「……クラウディア……バートン行ったよ?」
1人で壁に向かってまくし立てていたクラウディアは、デレクシスの声にハッと我に返る。
「ああん♪待ってぇマイマスタ〜♪」
くねくねと腰をくねらせて、クラウディアは屋上に行ったであろうバートンを追いかけて行った。
それを見送ったデレクシスは、窓に視線を移す。
(どうか無事で……!)
残された彼に出来る事は、皆の無事を祈る事だけだった。
屋上に着くと案の定大騒ぎになっていた。
見た事の無い魔物が要塞の壁を登って来たのだから当然だ。
「手を出すな!パルティオだ!」
騒ぎに集まってきた要員達が武器を構えているのを見てバートンは慌てて声をかける。
「バートンさん」
「ええ?!パルちゃん?!」
驚く要員達を余所にパルは更に高い見張り台へ登った。
「わわわわっ」
見張り台に居た要員が急いで避難し、他の要員達と合流する。
「何事ですか?」
「分からん」
バートンの視線の先では、見張り台に登ったパルが鼻をヒクつかせていた。
ぐるりと頭を巡らせて一定の場所で止まると、ぐぐっと身体を縮める。
ドンッ
「伏せろぉ!!」
誰かが叫んだのとパルが踏み切ったのは同時だった。
パルの脚力に耐えきれずに見張り台がガラガラと崩れ落ちる。
「パルティオ!」
腕で頭を庇いながらバートンはパルから視線を外さなかった。
屋上ぎりぎりまで彼女を追いかけ、柵を掴む。
パルは……蝙蝠の羽を大きく広げ、ゆっくりと滑空していた。
「クラウディア!追うぞ!」
柵に足を乗せたバートンは叫びながらそれを乗り越える。
「イエス!マイマスター」
クラウディアが嬉しそうに返事をしてバートンを追って柵を越えた。
呆然と見守る要員達の視界からバートンとクラウディアの姿が消える。
その次の瞬間、バンッという音と共に黒い影が視界を塞いだ。
それは魔物化したパルよりも大きな烏。
その巨大烏の背中にはバートンが乗っていた。