アイノカタチ-10
その、頭を抱えていたパルの様子がいきなり変わった。
びたっと動きを止めたかと思ったら、背中からバンッと羽が飛び出し、お尻から太い蜥蜴の尻尾が突き出した。
「パルティオ?!」
驚いたバートンは、素早い動きでデレクシスを背後に庇う。
デレクシスも庇われながらも身構え、精霊ザックが油断無く目を光らせる。
「パルティオ!」
バートンが名前を呼ぶがパルは頭を抱えたまま動かない。
「パル!!」
試しにテオと同じ呼び方をしてみたらビクンと反応した。
「パル!どうした?!」
ぐしゃぐしゃになったパルの髪の隙間から彼女の目が見える。
その目はギョロっとしていて何も見ていない様な目だった。
「やな……予感……」
小さく呟いたパルはいきなり立ち上がり、すたすたと窓辺に歩いて行く。
それを目で追ったバートンは、パルの言葉の意味にハッとした。
「テオドア達に何かあったか?!」
パルはバートンを無視して窓を開け、両手で縁を掴んで身体を乗り出す。
窓から外に出た部分……顔からざわざわと黒い鱗が生えていった。
それは首、肩、腕と範囲を広げていき、同時に身体の形も変化していく。
顔や胴体が伸びて大きくなり、窓から身体が全部抜け出た時には完全な蜥蜴になっていた。
「パルティオ!」
ずるりと滑るように窓から消えたパルをバートンは追いかけ、窓に手をつく。
窓の外には何も無く、パルの姿は消えていた。
「!!」
ふっと気配を感じたバートンはバッと上を向く。
「パルティオ!」
パルは上に居た……完全に魔物の姿に変化を遂げた彼女は、重力を無視する動きで要塞の壁を這い登って行く。
チッと舌打ちしたバートンは踵を返した。
「私が行くよ」
「俺が行く。アンタは留守番だ」
バートンはビシッとデレクシスを指差し、有無を言わさぬ勢いで言い放つ。
「クラウディアは居るか?!」
部屋を出て大声で叫ぶバートンの声に、艶のある色っぽい声が返事をした。
「はぁい♪マイマスター♪お喚び?」
黒いボンテージスタイルの妙齢の女性が、空中から湧き出るように姿を現す。
「パルティオが屋上に行く。追いかけるぞ」
バートンの言葉に喚ばれたクラウディアはぷうっと膨れっ面になった。