アイノカタチ-1
クラスタでのパーティーもお開きになり、各自与えられた部屋へ向かう。
「ランス様、お持ち帰りは許しませんよ」
ノアの厳しい声にランスはギクッと固まった。
酔い潰れたリュディを抱いていたランスは、そのままの姿勢で首だけをギギギと動かす。
「い、嫌だなあノアったら……ボクが意識の無い女性をこれ幸いと自分のものにする訳が無いじゃあないか」
「………………」
棒読みで言い訳するランスを、無言で見据えるノアの視線はヒヤリと冷たかった。
「……すみません……」
ランスは肩を落とし、自分の部屋とは反対側のリュディの部屋に進路変更。
「全く……油断も隙も無い方ですね……」
ノアは溜め息をついてランスの少し前を歩く。
「君にも大分飲ませた筈だけどねえ……いつの間に酒豪になったんだい?」
「飲んでませんよ。振りだけです」
ランスの思惑など分かりきっている。
リュディとノアを潰れさせ、リュディをお持ち帰り。
さすがにヤる事はしないだろうが、裸に剥いてたっぷり鑑賞し、ひとつのベットで朝を迎えればリュディは完全に勘違いするだろう。
だから、飲む振りをしてランスに目を光らせていたのだ。
「……つまらない……つまらないよ、ノア……」
「そんな事、知りませんよ」
これがリュディに意識があって同意の上ならば別に止めないのだが、付き人としてファンに泥を塗るような事だけは許せない。
「ちゃんとお誘いになれば宜しいのに」
リュディの様子からするに、まんざらでも無さそうだったが……。
「……まあ……私は臆病者だからね」
以前、ノアには『リュディヴィーヌ嬢には私の全てを知っていて欲しい』とか偉そうに言ったが、大き過ぎる身分はランス本人を見えなくする。
贅沢を言えば身分抜き、もしくは身分含めて自分自身を見て欲しいのだが、リュディに関しては身分を見ていても構わない。
それでも自分のものになるなら全然オッケー……そんな気にさせる程ランスにとっては魅力的な存在なのだ。
だから、勘違いであっても既成事実を作れば良いかなあ……という浅はかな考え。
「それは臆病者ではなく卑怯者と言うのですよ?ランスロット様?」
臆病者に失礼だ、とノアは厳しく指摘した。