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スプーン・ポジション
【女性向け 官能小説】

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メール調教-5


仕事が何も手につかない状況のままデスクに座ってぼんやりしていると、入り口のドアが勢いよく開いて一輝が出社してきた。

「おはよう」

一輝は、にこやかに笑いながら自分のデスクの前に立つと、満足げな表情でフロアをぐるりと見渡した。

私はずっとモヤモヤ考え事をしていたから、長沢以外のみんながこの席替えにどんな反応をしているのか全く見ていなかったことに今更ながら気がついた。

みんなどう思ってるんだろう──?
私と一輝のこと……誰かが勘付いているんじゃないだろうか?

また新たな心配が私の頭の中に一気に広がっていく。
しかし、そんな私の感情をまったく意に介さない様子で、一輝が真っ直ぐに私を見つめて微笑みかけてきた。

「祐希、おはよう」

「はっ……はいっ!」

挨拶をされただけなのに、心臓が飛び出してしまいそうなくらい動揺してしまっている。

「……お、おはようございます」

声が不自然に上擦ったのが自分でもわかった。

みんながどういう表情をしているのか、新しい席からは背後の様子が全く見えないが、一人だけ名指しで挨拶するなんておかしいと思われているに違いない。


振り返って確かめるわけにもいかず、私は椅子の上で出来るだけ小さく身を縮めた。

「着任してからしばらく様子を見させてもらってたんだが、少しやり方を変えてみようと思う。デスクはしばらくこの形でいきたいと思うが、基本的な業務自体は今までと変わらない。細かい変更点は個々に指示する。何か不都合があればなんでも言ってきてくれ。──以上だ」

何の詳しい説明もないまま、一瞬で朝のミーティングは終了し、すぐにそれぞれのデスクからパソコンのキーを叩く音が響き始めた。

実際システム推進課の仕事は、一人ひとりがそれぞれのパソコンで処理する仕事が多く、机の位置が変わったからといって別段大きな支障があるわけではない。

とりあえず大きな反発や混乱はなく、業務はスタートした。

まだ一輝ときちんと話せていないことが気になったが、私も仕方なくパソコンの画面を開いた。

意識しないでおこうとしても、モニターの向こう側に見えている一輝の姿が気になってしまい、やりにくくて仕方がなかった。


しかし、仕事のほうは今日中に解決しないといけないトラブルがいくつか残っている。

私は雑念を振り払おうと軽く咳払いをした。

いつものように、まずはメールをチェックする。

毎日社内の各部署や支社から送られてくるたくさんのメール。

その内容を把握し、処理方法をある程度考えてから今日の業務の優先順位を決めていくのだ。

先週から持ち越している仕事もいくつかあるし、今日は特に忙しくなりそうだった。

全てのメールを読み終えた時、新着メールを知らせるサインが点滅した。

『えーっ……今日はもう手一杯だからこれ以上は無理』

そう思いながら着信画面の先頭に戻ってメールを開くと、それは目の前に座っている一輝からのメールだった。

【ここからだと祐希の姿がよく見えるよ】

か……一輝……っ。

文面を読んで慌ててメールを閉じたが、すぐに次のメールがきた。

【デスクの下から見える脚がすごく色っぽい】

───もう、社内メールで何言ってんのよ。
誰かに見られたらどうするの?

『やめて』

無表情のまま短いメールを送り返した。
ほとんど同時のタイミングで新たなメールが届く。

【もう少し脚を広げてよ】

『やめて下さい』

強めの口調で言い返してからチラッとモニター越しに向こうを見ると、一輝は薄い笑みを浮かべながら私の膝のあたりをじいっと見つめていた。

───やだ……。

その絡みつくような視線を意識した途端、私の下半身がじわっと急激に熱を帯びるのがわかった。



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