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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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少しだけ、揺れる-15

……ああ、やっぱり怒らせちゃったから、受け取ってくれないか。


落胆して俯いているその刹那、あたしの手からスッと微糖の缶コーヒーが視界から消えてしまった。


慌てて顔を上げると、缶コーヒーはいつの間にか彼の手の中に。


呆気に取られていたあたしに向かって彼は、



「……でも、もらっとく。

ありがとう」


とだけ言うと、ニッといたずらっぽく笑いかけた。


そして再びあたしに背中を向けると、今度こそ本当に喫煙室を出て行った。


一気に静かになる喫煙室。


取り残されたあたしは、しばし金縛りに遭ったように動けなくなっていた。


たった今、久留米さんがあたしに初めて見せてくれたいたずらっぽい笑顔がやけに脳裏にちらつく。


そしてあたしは、少しだけ動くようになった両手をそっと頬にあてた。


あたしの頬は、熱でもあるんじゃないかってくらいに熱くなっていた。


無愛想な人が見せる無邪気な笑顔の破壊力は相当なもので、あたしは一人、


「ヤバい……、あの笑顔は反則でしょ……」


なんて呟いていた。



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