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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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蜜月1-1

 帰宅したのは夜十時を回っていた。駅の構内のトイレで何度も確認したが、玄関先でもう一度身だしなみを整えた。服を引っ張りながらホテルに着いたときのことを思い出した。
 男が一人、ホテル街の曲がり角にある電柱の陰でケータイを使っていた。だが男の耳からはケータイがだいぶずれていた。それは少しずつ下がっていき、しまいには喉もとまで下がっていった。あれでは相手の声が聞こえないばかりか、相手も男の声が聞こえないだろう。そばを通ったときチラッと男の顔を見ると、まるで幽霊でも見たような顔をしていたのでぞっとした。
 ホテルに入るところを見られるのがいやで、いったんやり過ごした。しばらくして戻ってみると、去っていく男の後ろ姿が見えたので急いでホテルに飛び込んだ。
「ごめんなさい、遅くなって」
 笑顔で出迎える夫の顔を見て涙ぐみそうになった。必要以上に顔を伏せて靴を脱ぐ。泥が付いているのを発見すると、下駄箱を開いて急いで仕舞い込んだ。
「会計の人が来られなくなって大変だったの。細かい文字をたくさん見たから目が疲れたわ。ついでに肩もこっちゃった」
 聞かれもしないことを話す。疲れているのは本当だが……。
 人は嘘をつくと饒舌になり、さらに嘘を積みあげていくことを身をもって実感した。恐ろしことである。
「お風呂沸かしてあるよ。今日は早く帰れたから僕はもう入った。恵はまだだけどいつも遅いしね。入るといいよ。遅くまでご苦労さん」
 夫の気遣いにまた涙が込み上げそうになり、二階を見上げて「じゃあ、入ろうかしら」と、ごまかす。今は娘と顔を合わせたくない。すぐにでもお風呂に入りたいのでありがたかった。
 浴室へ向かうとき「スカート汚れているよ」と言われ、ハッとして振り返ると夫は背を見せていた。
 身をよじって見てみるとお尻の辺りに、こすったような緑色のシミが付いていた。よく見るとストッキングも伝線しているところがあった。
 ほころびが生じていくような、暗澹とした気持ちになる。草色のシミは落ちないかもしれない。脱衣所にある洗濯カゴの中にスカートを丸めて入れて、ドアの方をチラッと見てからスリット入りの白いパンティを脱いだ。
 家に近づくにつれ、歩きづらくなっていたので早く脱ぎたかった。股間のあたりがべっとりと濡れている。膣から溢れ出た彼の精液だ。駅のトイレでビデを使ったのだが、まだ奥の方に残っていたらしい。そのにおいを鼻腔で感じてめまいがした。パンティを持ったまま浴室に逃げ込んだ。
 彼とは一ヶ月以上逢っていなかった。もちろん仕事が忙しいのは分かっている。夫が忙しそうなので上司である彼はもっと忙しいはずだ。
 彼に放っておかれる身の辛さは日に日に増した。彼が欲しくて欲しくてしかたがなかった。とうとう我慢できずに無理を言うと彼はすぐに飛んできてくれた。
「どうしたの? 大丈夫かい?」
 ハッとして顔を上げると夫が見つめていた。
 お風呂から上がって、冷たい牛乳をコップに入れて飲んでいた――はずだった。テーブルに座りコップを握りしめたまま動かない姿を見て声をかけたのだろう。
「疲れているんだろう? もう休んだらいい」
「ありがとう。でも大丈夫。婦人部の人って結構うるさ型がそろっていて大変なの」
 話をそらす。うるさ型が多いのは本当のことだ。
「みんな君より年輩の人たちだろう?」
「そう、全員」
「大変だな、そりゃ」
 そう言って夫はあくびをした。


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