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It's
【ラブコメ 官能小説】

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△△△△△-1

入院生活は2週間にも及んだ。
最初の頃は頭痛と高熱で頭がおかしくなりそうだったが、1週間もすると、今度は暇な毎日が辛かった。
そして何よりも辛いのが、毎週恒例の腰椎穿刺だ。
それをやると数日間は腰痛に襲われる。
退院日の前日にも評価のため行われ、結局退院してからも数日間腰痛のため陽向はベッドから降りるのにも苦労していた。
そろそろ12月を迎えるというある日、陽向はいつものごとく腰痛に襲われながら目覚めた。
寝返りをうつだけでもズキズキと痛む。
「あたっ…!」
つい、出てしまった言葉に口を塞ぎたくなる。
誰もいないのに独り言を言っているなんてさみしすぎる。
やっとのことで起き上がり、リビングに行ってヒーターをつける。
あー…さむ…。
ヒーターがつくまでの間、お湯を沸かしてコーヒーの準備をする。
お湯が沸いたらコーヒーを淹れ、ヒーターの目の前を陣取る。
これが最近の起きてからのパターンだ。
時計を見ると10時を回っていた。
なんか、もったいないなぁと思う。
身体が温まった頃、ゆっくり立ち上がると、ピンポーンとインターホンの音が部屋に鳴り響いた。
出ようとしたその時、ガチャッという音と共に湊が入ってきた。
「おーい、てめーはまた鍵かけねーで。危ねーだろーが」
「勝手に入ってきて第一声がそれ?!お邪魔しますくらい言いなよ」
「お邪魔してまーす」
「…もうっ」
最近、湊は陽向の家に毎日のように来る。
退院時の検査結果があまり良くなく、さらに2週間の自宅療養を言い渡され、心配だから、と言って面接の日以外は来てくれるのだ。
家のことはほとんど湊がやってくれる。
出来ると言っているのに。
でも、一緒にいれるだけで嬉しい。
「今日は面接ないんだ」
「んな毎日あるわけねーだろ」
「わかんないもん、普通の就活なんて」
「いーよな、お前は楽で」
「楽じゃないし。こっちはあと2ヶ月で試験なの。入院しておまけに2週間も自宅療養なんて…」
模試も受けらんないし、みんなに会えないし焦りと寂しさしかない。
そう言おうと思ったが、こうして時間を見つけて来てくれている湊の前では言えなかった。
それに大学病院が附属であるため、早い段階で就職先は決まっているのだ。
だから、一般の就活生よりはだいぶ楽だと思う。
陽向は言葉を飲み込み、「コーヒー飲む?」と湊に言った。
「あー、俺やるよ。座ってな」
「ありがと」
数分後、再びさっきと同じ香りが漂い始める。
「俺の好きなやつだ」
「そだよ」
湊の家で飲むコーヒーが美味しくて、前に同じやつを買ったのだ。
寂しくなると、このコーヒーを淹れて湊を思い出す。
会いたいなぁ…と。
そんなの気持ちが悪いと思うので湊の前では言えないけど。
ソファーに並んで座ると「うちで飲んで好きになった?」と湊がお決まりのニヤニヤ顔で言った。
「うん」
「つーかブラックなんだ」
「そーだよ」
「前は『ミルク1つと砂糖3つ!』とか言ってたクセに。大人になったんやねー」
湊は楽しそうに言いながら陽向の頭をガシガシ撫でた。
『コーヒーはブラックに限る。砂糖なんか入れたら味わかんなくなんだろーが』とコーヒー好きの湊に言われてから、家で密かにブラックを飲む練習をしていたのだ。
恥ずかしいので、それも湊には言えない。
「うるさいなっ!バカにしないでよ」
腹パンしようとした時、不意に腰が痛み「ゔっ」と変な声が出る。
「まだ腰痛いんか?」
「痛い」
「じゃあ当分殴られることはねーな」
湊はクスクス笑って陽向に変顔を向けた。
「うるさい!黙れっ!…あたた」
「ははっ」
湊にぎゅっと抱きしめられる。
そうされると、怒りもどこかに吹き飛び、安らぎへと変わる。
湊のフワフワのパーカーに顔をうずめて、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「犬かよ」
「いい匂い…」
香水の香りが鼻腔を通って脳を刺激する。
甘酸っぱいようでふんわりとした優しい匂い。
湊は鼻で笑うと、更にきつく陽向を抱きしめた。
「勉強しなくていーの?」
テーブルに重ねられた問題集を一瞥して湊が問う。
「する。…でもあと少ししたら」
陽向は湊のパーカーをぎゅっと握り、湊を見上げた。
湊が髪を撫で、微笑む。
ちゅっと短いキスをされ、顔の筋肉が綻んでしまう。
「朗報がある」
「え?」
湊は陽向のほっぺたを両手で包むと、ぎゅっと力を込めた。
「ウケる、その顔」
「痛いんだけど。朗報ってなに?」
「受かった。面接」
「え!えぇ!!!ほんと?!うそじゃない?!」
「そんなんで嘘つくかよ」
「だって湊うそつきなんだもん」
「嘘じゃねーよ、ホント」
湊が受かったのは、ここからわりと近いところにあるイタリアンレストランだった。
4月からそこで、社員として働くらしい。
「給料少ねーし、勤務時間は長ぇーけど、好きなことできるから頑張ろーと思う」
「よかったね!」
あたしも頑張らなきゃ…。
頑張らなきゃと思いつつ、勉強は進んでいないという現状。
模試も入院とこの自宅療養のせいで受けることができず、楓が問題をもらってきてくれて後日提出といった形になっていた。
まだ1問も解いていない。
さっと目を通したが分からなくて放り出してしまった。
みんなは着々と勉強の成果を出しているのかな…。
「おい」
「…えっ!」
「なにボケっとしてんだよ。すぐボーッとすんだからお前は。勉強しなくていーの?」
「する…」
陽向は湊からズルズルと滑りおりると、テーブルに向かってまだやり始めたばかりの模試を解き始めた。


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