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LADY GUN
【推理 推理小説】

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先輩…-4

 「私は何が何でも警察に入りたかったんです。入れた時に報告はしませんでした。一人前になった時、報告しようと決めたんです。警察に入れた時には違う事を報告しました。それは、小さい頃からずっとずっとお父さんが大好きだった事…。どんなに家にいなくても、私はお父さんが大好きで尊敬していた事。私は警察に入れた事よりも、それをお父さんに伝えたかったんです…。旅行とか殆どなかったけど、でもたまに休みの時には近くの動物園に連れて行ってくれた事…。例えその途中でお仕事が入っていなくなっちゃっても、その時のお父さんの背中からはごめんなって言う気持ちが伝わってきた。だから私もお父さんの背中に向かって、お仕事頑張ってね、大好きだよって心の中で言ってました。だって、世の中を平和にする為に走っていくお父さんに悲しむような事、言える訳ないじゃないですかー。でも…その気持ち、口に出して言いたかったー。何で言わなかったんだろ。何で言えなかったんだろ…。」
涙が机にたまってきた。静香は思わず若菜の肩を抱き優しく頭を撫でる。
 「私はお父さんの代わりに刑事として世の中を平和にしなきゃならないんですぅ。婦警さんじゃダメ…。刑事じゃなきゃ…刑事じゃなきゃ…」
若菜は子供の頃、部屋に入ってきて優しく頭を撫でてくれていた父の感触を感じながら眠ってしまった。若菜の頭を撫でる静香はか細い声を振り絞り囁く。
 「ゴメンね…、ゴメンね…」
と。机の上に溜まる涙はむしろ静香の方が多くなったかもしれない。
 「静香…、俺も一生懸命協力するからな?」
 「うん…。」
静香は自分の全てを、まだ頼りない駆け出しの新米女刑事に伝える決心をした瞬間だった。
 (上原さん…、私はあなたの大切な娘さんを絶対に立派に育ててみせます。)
心に誓う静香。若菜の父、上原正芳と静香はかつての師弟関係にあった事は、まだ若菜には伝えないつもりであった。
 すっかり酔い潰れた若菜。静香は自分のマンションに運びベッドに寝かす。若菜の運び役をした俊介。
 「思ったより重いな、この子…。」
太ってはいないが若干ぽっちゃり気味の若菜は自分の体の重さを男性に知られたなどとは知る由もなくぐっすり寝ていた。
 「上原さんの娘さん、ホントいい子…。できれば刑事なんかにさせたくない。」
若菜を見つめながら言った。
 「父を見て自ずとこの道を選んだんだ。ちょっと刑事としては頼りない感じはするけど、でもあの上原さんの娘さんだ。秘めたものはあるはずだよ。それに警察に入ろうと思ってもそう簡単には入れないよ。つーか、こんな可愛らしい子がわざわざ警察に入ろうとする事自体強い意思がある証拠さ。俺達がそれらを育てて引き出してやらないとな。」
 「うん。」
静香はずっと若菜の頭を撫でていた。
 「お父さん…」
寝言を言う若菜。静香の父そっくりな手の感触に懐かしい思い出が蘇ったのかも知れなかった。俊介が帰った後、静香は若菜と添い寝するようにして眠りについた。


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