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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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出会う-8

女の子にモテそうな目を惹く容姿をしてるのに、浮いた話一つないと文屋さんが言っていた。


ゲイなイメージなんてまるで湧かないけど、童貞ってのもそれはそれでイメージが湧きづらかった。


というか、彼からはゲイだとか童貞だとか、そんな俗っぽい言葉がまるっきり不釣り合いに思えた。


この人の無表情な顔がなんだか無機質に思えて、人間というより感情のない人形やロボットのように見える。


煙草が短くなったから、喫煙室備えつけの灰皿代わりのブリキのバケツにそれを投げ入れる久留米さん。


煙草はジュッと音を立て、煙を上げて火が消えた。


そして踵を返し、喫煙室を出て行こうとする久留米さんの背中に、気付けばあたしは声を投げかけていた。


「あの、ライターありがとうございました」


すると彼は、チラッとこちらを見て一礼するだけで、すぐさまドアノブを握り締めて喫煙室をあとにした。


ドアノブを握る久留米さんの手は大きくて骨ばっていた。


あたしはふと、久留米さんはあの大きな手で誰かを抱き締めたりしたことがあるのかな、なんてそんなどうでもいいことを思ってしまった。





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